2020年06月01日号
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artscapeレビュー

2015年11月15日号のレビュー/プレビュー

ポール・コイカー「ヌード アニマル シガー」

会期:2015/10/03~2015/11/22

G/P GALLERY[東京都]

オランダの写真家、ポール・コイカー(Paul Kooiker 1964~)は、以前から気になる写真家の一人だった。肥満体の女性をモデルにした写真集『Heaven』(2012)など、ユーモアと観察力が結びついた独特の世界観の持ち主だと思う。今回のG/P GALLERYでの展示は、そのコイカーの日本で最初の個展であり、ハーグ写真美術館で2014年に開催された回顧展に出品された「Nude Animal Cigar」のシリーズから抜粋した作品を見ることができた。
タイトル通り、ヌード(例によってふくよかな女性たち)、動物園で撮影された動物や鳥たち、そして愛煙家である彼にとって愛着のある品物であるシガーの吸い殻の3つのテーマが、生真面目に撮影され、やや茶色がかった色味のモノクローム写真にプリントされて、図鑑のような趣で並んでいる。「3つのオブジェを3部構成のユニットとして組み合わせて、ケミカルな反応が引き起こされるインスタレーション」として提示するという意図が、明確に伝わってくるいい展示だった。
連想したのは、マン・レイ、J.アンドレ・ボワッファール、ハンス・ベルメール、ヴォルスら、シュレアリスムとその周辺のアーティストたちが1920~30年代に撮影した写真群である。彼らは無意識の領域にうごめく性的な欲望を、ヌードやオブジェに託して隠喩的に表現したのだが、コイカーも明らかにその系譜に連なる写真家といえるだろう。プリントのやや古風な雰囲気が、シュルレアリストの末裔という彼のポジションにうまくはまっているように感じた。

2015/10/20(火)(飯沢耕太郎)

小豆島来訪──ドットアーキテクツ《UmakiCamp》ほか

[香川県小豆島]

仙台から小豆島へ。朝の5時30分に出て、12時40分頃に到着する。前回の瀬戸内芸術祭で時間がなくなり、見逃した西沢立衛の曲げた大きな鉄板を組み合わせた葦田パビリオンや福武ハウスを見学する。アートのような建築だが、人々のふるまいを誘発する空間をもっていた。島田陽が手がけた公衆トイレは、きれいに維持されており、感心する。ドットアーキテクツが手がけたUmakiCampへ。300万円の材料費で、セルフビルドを行なったものであり、そこから逆算して、構造や工法、ディテールを決定している。自主建設だが、昔のような閉鎖的な砦とはならず、開放的な空間として地域の開かれたコミュニティになるところが現代的だ。また隣には、新しく森田一弥によるカマド小屋も増えていた。続いて、前に訪れたときはなかった美井戸(ビート)神社を見学する。ヤノベケンジ×ビートたけしの作品《ANGER from the Bottom》の上に、ジャッキアップで高さを調整できる大きな切妻平入の屋根が出現した。その造形は、弥生や神明造へのレファレンスだという。そして坂手港から出発したジャンボフェリーに乗船すると、その頂部にトらやんの彫刻が載っていた。

写真:左=上から、葦田パビリオン、福武ハウス、島田陽《おおきな曲面のある小屋(公衆トイレ)》、UmakiCamp、森田一弥《カマド小屋》 右=上から、ANGER from the Bottom、美井戸(ビート)神社、ヤノベケンジ《ジャンボ・トらやん》

2015/10/21(水)(五十嵐太郎)

フランク・ゲーリー:パリ-フォンダシオン ルイ・ヴィトン建築展

会期:2015/10/17~2016/01/31

エスパス・ルイ・ヴィトン[東京都]

21_21に続いてオープンしたフランク・ゲーリーの建築展。こちらは昨年パリのブーローニュの森に開館した、ゲーリー設計のルイ・ヴィトン財団美術館に絞った展示なので、見やすいし、わかりやすい。半透明の素材で外側を覆われたこの美術館は、ゲーリーいわく「フランスの深遠な文化的使命を象徴する壮大な船」だという。そのせいか、帆を掲げた帆船のようにも見えるし、またゲーリーお気に入りのモチーフである魚も想起させる。いずれにせよ流動体みたいな建築だ。マケットはこれでもかというくらい繰り返しいろんな素材で試しているが、もっと驚くのは最初のスケッチで、ほとんど線がのたうってるだけ。このサルのような奔放な線からすべてが始まるのは象徴的だ。

2015/10/21(水)(村田真)

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川原直人「クロノスタシス」

会期:2015/09/26~2015/10/24

タカ・イシイギャラリー[東京都]

写実絵画で知られる川原の裸体画が7点ほど。写真をそのまま引き写したフォトリアリズムのようでありながら、なにか違う。どこか古典的な匂いがする。でも西洋の古典と違って泥臭く、なんとなく懐かしい感じ。解説を読むと、明治期の洋画家、原撫松を意識したらしい。なるほど、この光、このポーズ、黒田清輝以前の脂色の油絵を想起させる。撫松が現代によみがえったらきっとこんな絵を描くだろう、という絵を実際に描いてみせた。

2015/10/21(水)(村田真)

Reflection:返礼-榎倉康二へ

会期:2015/10/01~2015/10/25

秋山画廊[東京都]

榎倉さんが亡くなって20年。10年目にも教え子が展覧会を開いたが、今回は東京藝大で榎倉の薫陶を受けた数少ない女性作家だけの企画展が計3カ所で開かれてる。秋山画廊では白井美穂、豊嶋康子、日比野ルミ、福田尚代の4人の出品で、いずれも60年代生まれ。木の箱を重ねた上に黄色い絵具をレモンのように固めて連ねた環を載せた白井、手の届かない壁の上のほうに役立たずの本棚をとりつけた豊嶋など、難解な作品が多いのは榎倉ゼミならではのことか。

2015/10/21(水)(村田真)

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