artscapeレビュー

2015年11月15日号のレビュー/プレビュー

KERA・MAP #006「グッドバイ」(横浜公演)

会期:2015/10/17~2015/10/18

KAAT神奈川芸術劇場[神奈川県]

太宰治が執筆した、女性問題で振り回される未完の小説を、古典的な大団円を迎えるラブコメに帰着させ、随所に笑いを散りばめている。左右からスライドして出し入れする舞台装置の転換、奥の階段の使い方も興味深い。永井キヌ子役の小池栄子がなかなかの怪演だった。

2015/10/18(日)(五十嵐太郎)

The Emerging Photography Artist 2015 新進気鋭のアート写真家展

会期:2015/10/13~2015/10/18

アクシスギャラリー シンポジア[東京都]

ジャパン・フォトグラフィー・アート・ディーラーズ・ソサイエティー(JPADS)が主催する第4回目の「新進気鋭のアート写真家展」が、東京・六本木のアクシスギャラリー シンポジアに会場を移して開催された。各大学の写真学科、写真専門学校の教員を中心としたノミネーターが、それぞれ参加者を推薦するというやり方も、ほぼ定着してきたようだ。今回の出品作家は浅田慧子、馬場さおり、陳程、橋岡慶嵩、岩佐・ジェームズ・スワンソン、小池莉加、今野竣介、李受津、毛宣恵、松本典子、山本圭一、吉田麻美の12名である。
既に第14回「写真ひとつぼ展」(1999年)でグランプリを受賞し、写真集『野兎の眼』(羽鳥書店、2011年)なども刊行している松本典子を除けば、現役の学生か、まだ卒業して間のない、文字通りの「新進気鋭」の写真家たちの作品が並んでいる。技術的には申し分なく、作品世界もしっかりと構築されている作品が大部分だが、はみ出していく若さやパワーはほとんど感じられない。おそらく出品者の選考法にも問題があるのではないだろうか。先生が学生を選ぶということになると、どうしても優等生が多くなるのは仕方のないことだからだ。
目についたのは陳程(チン・チェン 日本大学芸術学部卒業、中国出身)、李受津(イ・スジン 大阪芸術大学大学院在学中、韓国出身)、毛宣恵(マオ・シュアンフイ 日本大学芸術学部卒業、台湾出身)といった、アジア諸国からの留学生の作品である。表現意欲、技術、継続性において、彼らの作品は他の日本人写真家たちの多くを凌駕しているように見える。アジア各地の大学や専門学校の学生、出身者にも、選考の網を拡大していくなど、そろそろ一工夫が必要な時期に来ているのではないだろうか。

2015/10/18(日)(飯沢耕太郎)

ニューアート展 NEXT 2015「田中千智 展」

会期:2015/10/02~2015/10/18

横浜市民ギャラリー[神奈川県]

昨年、伊勢山に移転して初の「ニューアート展 NEXT」。今年選ばれたアーティストは、福岡の田中千智。なぜ福岡のアーティストが選ばれたかというと、もちろん才能ある作家を紹介するのに地域なんか関係ないともいえるが、それより彼女は2008年の第1回黄金町バザールのとき横浜に滞在し、2カ月間に黄金町界隈の住人107人のポートレートを制作、それを機に注目を浴びるようになったからだ。このことからもわかるように、彼女の資質のひとつは、ためらいなくサラサラッと早描きであることだ。ほかにも作品の特徴として、背景がほとんど黒く塗りつぶされていること、大半が人物画で、しかも正面から見た全身像が多いこと、そのためどこか寂しげであること、などが挙げられる。だから彼女の絵は一目見れば田中千智の絵だとわかる。これは大切なことだ。出品は《107人のポートレート》のほか、大半がここ2、3年の新作ばかり。驚くのは今年描いた100号を超える大作が13点もあること。9カ月間で、しかも出品されてない作品もあるはずだから、すごい生産力というほかない。

2015/10/18(日)(村田真)

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ル・コルビュジエ×日本──国立西洋美術館を建てた3人の弟子を中心に

会期:2015/07/21~2015/11/08

国立近現代建築資料館[東京都]

世界でも日本はル・コルビュジエの影響を強く受けた国だが、彼とかかわりをもった建築家の貴重な原資料とデジタルアーカイブを一覧できる。当然、弟子の前川國男、坂倉準三、吉阪隆正が中心だが、パリのボザールから帰国した中村順平でさえ、その東京復興計画に残像が認められるという。また、ル・コルビュジエの作品に関して、磯崎新、二川幸夫、槇文彦が撮影した写真、安藤忠雄のスケッチなども展示し、現代の建築家がとらえたモダニズムの巨匠を紹介する。

2015/10/19(月)(五十嵐太郎)

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建築家 フランク・ゲーリー展 "I Have an Idea"

会期:2015/10/16~2016/02/07

21_21 DESIGN SIGHT[東京都]

田根剛がディレクションした21_21の「建築家フランク・ゲーリー」展へ。日本における彼の個展は、ギャラリー・間のスタート以来で30年ぶりだろう。今回の展示は、アイデアが生まれる背景やその実現化のプロセスを紹介している。とりわけ、事務所でアナログな模型を大量につくりながらも、最新のデジタル技術を駆使する設計の体制が刺激的だ。

2015/10/19(月)(五十嵐太郎)

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2015年11月15日号の
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