artscapeレビュー
2015年12月15日号のレビュー/プレビュー
第10回アトリエの末裔あるいは未来
会期:2015/11/20~2015/11/29
藝大の陳列館と、近くの平櫛田中の旧宅を会場にした彫刻展も10回目。今回はこれまでの出品者も含めた展示で、とくに陳列館のほうは2フロアに70人もの小品が並べられ壮観だ。木の塊からカリフラワーと台座を彫った内田麻ゆ、雑巾のようにボロボロになった人工芝を彫った田中圭介、木の突起を何百本も放射状に固めて《うに》と題した大野匠、田中の《鏡獅子》をオカマ化した根上恭美子、初音ミクを黒人化して《初音モク》にした大平龍一、うねるような木の根っこにうねるような髪の毛みたいな模様を彫りつけた木戸龍介、落下中のテナガザルをキングコングにダブらせたビル・ウォルフ、スケートボードを細かく刻んで高さ70センチほどの塔に積み上げた増井岳人、石膏でつくった手の彫刻に木目模様を描いて木彫に見せかけた宮原嵩広など、なんでこんなもの彫るかなあ的なトボケた作品が多くて楽しめた。田中邸のほうは、雲のような盆栽(盆栽のような雲か)を彫った海谷慶、木の台座の上にマックロクロスケを置いた森淳一、細長い棺桶のような木箱をつくった福迫大智、階段を下りるときにしか見られない場所に妖怪みたいな彫刻を置いた大石雪野など、木造家屋の空気を読んだ作品が多い。木彫の概念を更新させる反伝統主義のいい展覧会だ。ずっと続けてほしい。
2015/11/29(日)(村田真)
プレビュー:《Showing》03 映像 伊藤高志 上演作品
会期:2016/01/23~2015/01/24
京都芸術劇場 春秋座[京都府]
《Showing》シリーズの企画意図は、「『公演』における各要素の中で、複製技術を持つメディア(音、写真、映像など)を取り上げ、それぞれの視点から劇場へと向かう創作を試みる」と掲げられている。過去2回の開催では、音響作家・荒木優光、写真というメディウムの特性を自覚的に扱う美術作家・加納俊輔による上演作品が発表されている。
《Showing》第3回目では、映像作家・伊藤高志による上演作品を予定。80年代以降、写真をコマ撮りした魔術的なアニメーション作品で知られる伊藤は、舞台人とのコラボレーションとして、ダンサーの伊藤キムとの『ふたりだけ』(2002年)、山田せつ子との『恋する虜─ジュネ/身体/イマージュ』(2008年)、寺田みさことの『アリア』(2013年)などを手がけるとともに、川村毅作・演出による『現代能楽集AOI/KOMACHI』(2003年)などで映像演出を行なっている。コマの連続による静止画の運動、フレーミング、フィルムの物質性など、「映像」を成立させる構造に自覚的に言及してきた伊藤だが、本公演では、そうした再帰的な思考が、「演劇」あるいは「劇場」という空間へどのように差し向けられるのだろうか。
2015/11/30(月)(高嶋慈)
カタログ&ブックス│2015年12月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
コンピュータ・アートの創生 CTGの軌跡と思想 1966 - 1969
日本が生んだ第1世代のコンピュータ・アート集団で国際的にも有名なCTG(Computer Technique Group)の初の本格的研究。CTGとその時代を一次資料で詳細に検証し、オリジナルプログラムの失われたCTG作品を今日のプログラミング言語で再現。コンピュータ&メディア・アート史研究の必須文献。[出版社サイトより]
みなでつくる方法─吉阪隆正+U研究室の建築
2015年12月3日〜2016年3月13日まで、国立近現代建築資料館で開催中の展覧会カタログ。展示資料の図版、写真、寄稿、その他の資料を掲載。
スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。—未来を思索するためにデザインができること
本書は、「問い」を生み出し、未来のシナリオをデザインすることで、今ある世界に別の可能性を提示する「スペキュラティヴ・デザイン」について紹介した初の日本語版書籍です。ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)のデザイン・インタラクティブ学科で10年にわたって教鞭を執り、「スペキュラティヴ・デザイン」の提唱者として世界的に注目を集めている著者が、アート・小説・イラスト・写真・映画などあらゆる領域を引証しながら、未来をスペキュレート〈思索〉する視点について紹介します。[出版社サイトより]
内藤礼|1985-2015 祝福
美術家・内藤礼の30年にわたる仕事を包括する初の作品集。 最初の個展《Apocalypse Palace》から、大きな話題を呼び初期の代表作となった《地上にひとつの場所を》、昨年の《信の感情》など、国内外で発表された作品を中心に、パーマネント作品《母型》(豊島美術館)や《このことを》(家プロジェクト「きんざ」)、主要なドローイング、絵画作品、テキストを収録。[出版社サイトより]
杉本博司 今昔三部作
2015年10月28日〜12月23日まで、千葉市美術館開館20周年記念展として開催されている「趣味と芸術 - 味占郷/今昔三部作」のカタログ。展示作品の《ジオラマ》(1975〜)、《劇場》(1975〜)、《海景》(1980〜)から16点を掲載。
都市論ブックガイド とりあえず75冊
南後(明治大学情報コミュニケーション学部)が選書した都市論・社会学を中心とした必読文献に、ゼミ生の研究テーマに関する必読文献を加えた計192冊の選書リストの中から、「とりあえず75冊」の書評を書いたブックガイドである。[本書より]
Traveling Research Laboratory 2015
2014年から始められた同タイトルのアートプロジェクトの記録集。12日間6人のメンバーが旅をしながら車内を録音スタジオに見立て、ポッドキャスト番組を録音、編集し、旅先から配信した。本書は6回分の音声データとエッセイなど旅の記録で構成されるCDとブックレット。
2015/12/15(木)(artscape編集部)