artscapeレビュー
2016年09月15日号のレビュー/プレビュー
UNKNOWNS 2016
会期:2016/08/22~2016/08/27
藍画廊、ギャラリー現[東京都]
東京造形大学の絵画専攻の学生が出品し、慶応義塾大学美学美術史の学生が批評を書くというこの交流展も5回目。造形大は近藤昌美ゼミ、慶応大は近藤幸夫ゼミの学生が参加していたが、慶応の近藤先生が2年前に亡くなったため、今年がおそらく最終回になりそう。今回は藍画廊に菊池遼と瀬端秀也、ギャラリー現に品川はるなが出品。同じゼミながら作品は三者三様だ。菊池は写真を元にぼんやりしたイメージを浮かび上がらせたり、洞窟壁画に描かれた動物の輪郭をトレースしたり、いろいろ出してるが、作者の関心はおそらく、人間はいかにものを見るか、認識するかにあるだろう。瀬端は乳首かペニスを思わせる肉感的な形象を描いている。その丸っこい形態は、60年代のアメリカのTVアニメ「キャスパー」とか「オバケのQ太郎」を思い出すが、作者は知らないだろうね。品川は画面を単色のアクリル絵具で覆い、その一部をはがすのだが、はがした絵具は取り去らないで垂らしておく。ものによっては画面にカーテンがかかってるようにも見え、キャンバスと絵具との関係を問い直しているようにも感じる。絵具を物体として扱う傾向は近年しばしば見られるが、こうした扱い方は珍しい。
2016/08/26(金)(村田真)
ときたま展 ぷらたま生誕!
会期:2016/08/22~2016/08/27
巷房[東京都]
ペラペラの透明なプラスチック板「プラバン」に、油性ペンで絵を描いて切り取り、トースターで熱すると3分の1ほどに縮まって手ごろなアクセサリーとなる。知らなかった。ときたまは1年前これにハマって半年足らずで千個を越えた。次にサイズを大きくしたり、3枚組み合わせて自立する彫刻にしたりどんどん進化。全部で1500個ほどになり、「ぷらたま」と名づけて個展を開くことにしたという。3階の巷房1では大作(といっても30センチくらい)を百個ほど、地下の巷房2では透明な袋に入れた小品を千点ほど、階段下には数百個を床にインスタレーションしている。しかしいくらハマったとはいえ、絵を描くのが好きじゃなかったと自認する人(だから描かれているのは抽象パターン)が、1年たらずで1500個もつくるか? 本人いわく「人間、何がやってくるか分からない。天からやって来たとしかいいようがない」。抽象パターンといい、天啓といい、集中力といい、ある種のアウトサイダーアートを思わせる。
2016/08/26(金)(村田真)
《大分市アートプラザ》ほか
[大分県]
東北大の五十嵐研のゼミ合宿で大分に移動する。最初は磯崎新のミュージアムとなった《大分市アートプラザ》を元所員の吉野弘さんの案内でまわり、貴重な話をうかがう。開催中の三沢厚彦展は、リアルとイメージのあいだに位置づけられるキャラ的な動物彫刻が集合し、空間との対話も試みる。続いて、《岩田学園》へ。磯崎の初期作品となるマッシブなコンクリートの校舎から青木淳が担当したポストモダンの体育館や学生寮まで、教頭先生に面白く解説していただく。
写真:左=上から、《アートプラザ》《岩田学園学生寮》《岩田学園体育館》 右=《岩田学園》
2016/08/27(土)(五十嵐太郎)
《大分県立美術館》ほか
大分県立美術館[大分県]
《大分県立美術館》でランチを食べた後、副館長の案内により、免震、空調、搬出入、自然光の状態、展示の照明や可動壁など、使用者サイドからいろいろと建築についてうかがう。続いて、アルカイック建築都市設計事務所のオフィスを訪問する。公園前のコンクリートブロックの要塞だが、内部に入ると、中庭に開かれたカッコいい空間が展開する。インドネシアで見学したモダニズムの住宅を想起させる。
写真:左上=《大分県立美術館》 左下・右=アルカイック建築都市設計事務所
2016/08/27(土)(五十嵐太郎)
《House N》
[大分県]
竣工:2008年
夕方、藤本壮介による《House N》を訪問する。前回は青木淳さんと一緒に10分ほどしかいられなかったが、今回はつい1時間近く滞在してしまった。施主が最初はこれが家?と思ったように、一見ヤンチャな建築である。だが、丸見えのようで、巧みに視線をかわしながら守られた住宅になっており、実はとても落ち着く、居心地のよい内部空間で、何より住人がとても気に入っていた。
2016/08/27(土)(五十嵐太郎)