2018年01月15日号
次回2月1日更新予定

artscapeレビュー

TWSエマージング2017 第1期

2017年07月15日号

会期:2017/06/10~2017/07/09

トーキョーワンダーサイト本郷[東京都]

黒石美奈子、黒田恭章、神祥子の3人。黒石は草花、山、人物などをモチーフにしたエッチング。というか、山や人物もびっしり植物パターンに覆われているので、モチーフは草花というべきか。女子像など体全体が草花模様なので、まるで刺青か皮膚病みたいでステキ。銅版画の道具の展示は余計だ。黒田は格子柄の織物を絵画のように見せている。もともとキャンバスは麻糸を縦横に編んだ織物であり、絵画とはその上に絵具で物語を紡ぎ出すものだとすれば、これは絵画のゼロ地点といえるかもしれない。長方形と正方形の織物パネル計5枚を組んだ4畳半絵画は陰陽も思わせる。
神は一見とても頼りなさそうな絵画を出しているが、そこで繰り広げられているのは「見る」「見える」という現象を巡る哲学的考察だ。頼りなさそうな絵といっても、例えば《明るい部屋》は、スタンドの明かりを消そうとする自分を正面の鏡に映し出し、その背後の窓ガラスに映る自分の背中も映し出している情景を描いたもの。鏡や窓という絵画のメタファーを用いながら、錯綜する空間構造を見る者に読み取らせるだけの技量は備えている。だけでなく、鏡や手前のテーブルの位置など画面の収め方も絶妙だ。絵のなかの鏡に映る自分の姿(自画像でもある)に手を触れようとする《ふれる》や、人らしき姿を映し出す両目の絵と映像によって、まぶたの裏の残像まで描き出そうとした《まばたき/あらわれ》も、頼りなさそうな絵であるがゆえに真実味を帯びている。これは期待しちゃう。

2017/06/23(金)(村田真)

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