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海野弘『万国博覧会の二十世紀』

2013年11月01日号

発行日:2013年7月12日
発行所:平凡社
価格:760円(税別)
サイズ:新書判、230頁


20世紀に特化して万国博覧会の歴史をたどった著作。「博覧会」に関する書物は、吉見俊哉『博覧会の政治学──まなざしの近代』(中央公論社、1992)をはじめとして、和・洋書とも多数あれど、20世紀全般を通して記述されたものは少ない。本書は、1900年のパリ万博から1970年の大阪万博、以後90年代の地方博ブームまでの期間を扱う。ほぼ十年刻みで抽出した万博(1915年サンフランシスコ博、1925年パリ装飾芸術・産業博覧会、1930年パリ植民地博覧会、1933年シカゴ万博、1937年パリ「芸術と技術」博、1939年ニューヨーク万博、1958年ブリュッセル万博、1964年ニューヨーク万博、以上、本文表記ママ)の特徴を、時代の社会文化的背景・世相・建築家やデザイナーの関与と貢献の諸観点から読み解く。読者が気になるのは、愛知万博(2005)以降の21世紀の万国博覧会の行方であろう。モノを集積して大衆の教育を目論んだことから始まった近代の万博が、マルチメディアが発達した現代においてはたす役割とはなにか。万博とはなにを提示するものなのか。万博不要論が叫ばれるいま、20世紀の万博を振り返って過去に学ぶことは大きい。[竹内有子]

2013/10/12(土)(SYNK)

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