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東洋学の歩いた道「アジアを学ぶ──近代学習院の教育から」

2013年11月01日号

会期:2013/10/05~2013/12/21

学習院大学史料館[東京都]

「東洋学の歩いた道」を共通のテーマとして、学習院大学史料館、永青文庫、東洋文庫の三館が開催する展覧会。ジャンルや時代は異なるものの、いずれの施設にも東洋に関する研究や蒐集品がある。もちろん、東洋にフォーカスしたというだけでは他の美術館・博物館にも多くの優品があるだろう。地理的にも徒歩圏内に位置するこの3館による企画は、明治から昭和初期にかけての東洋学の発展、あるいは東洋美術への関心の拡がり、そして日本美術への影響の背景に、学習院の教育と人脈があったことを指摘しつつコレクションを紹介する、とてもユニークな構成になっている。
 学習院会場のタイトルは「アジアを学ぶ──近代学習院の教育から」。学習院における東洋学の始まりと、学生たちによる受容の様相に焦点をあてた展示である。明治23(1890)年、学習院の歴史学の教授であった白鳥庫吉(1865-1942)が「東洋諸国の歴史(東洋史)」という科目を担当した。この科目の設置が日本における東洋史教育の始まりであるという。また、同28年に学習院長となった近衞篤麿は、清国からの最初の留学生を受け入れ、自らが所蔵する漢籍を学生の勉学に供した。展示前半では、教育のために集められた内外の書物や、発掘物などの実物標本によって、学習院における東洋学教育の展開を示す。後半では、学生たちによる東洋学の受容について触れられている。その第一は学生たちによる大陸への修学旅行あるいは個人旅行である。学習院では大正7(1918)年から定期的に海外への修学旅行が開催されるようになった。旅行には白鳥庫吉や鈴木大拙ら東洋学の教員が同行し、学生たちの見聞を広めたという。そして第二に、そうした学習院の東洋学教育を受けた人物として、志賀直哉や武者小路実篤、柳宗悦ら、雑誌『白樺』の同人たちが挙げられている。『白樺』は西洋の美術を日本に紹介したことでも知られているが、その視点は東洋美術にも及び、雑誌には李朝の陶磁器や明代の絵画に関する論考も掲載されていたという。彼らが学習院の出身であることを考えれば、その背景に学習院の教育があったことは十分に考えられる。会場には武者小路実篤が永青文庫の設立者でもある細川護立に宛てた書簡も展示されている。明治39(1906)年に学習院高等学科を卒業した護立は、白樺派の活動を財政的にも支援していた。学習院における東洋学が、次の世代の研究や美意識を育てていった様が示される。[新川徳彦]

東洋学の歩いた道「古代中国の名宝──細川護立と東洋学」(永青文庫)へ続く]

2013/10/23(水)(SYNK)

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