artscapeレビュー
地域を彩る盆踊り
2013年11月01日号
会期:2013/07/12~2013/11/11
パルテノン多摩歴史ミュージアム[東京都]
多摩市域における盆踊りの歴史と変化をたどる企画。盆踊りは、本来は盂蘭盆(うらぼん)のころに迎えた精霊を供養するための踊りを起源であるが、室町時代にはすでに宗教的な意味合いは薄れ、民衆の娯楽として発達した。かつて多摩市域では死者の供養はおもに念仏講や僧侶が担っていたため盆踊りの習慣がなかったが、青年団が主催する盆踊りが行なわれていた地域もあるという。そうした状況が大きく変化したのは、多摩ニュータウンの開発以降である。旧来の共同体との結びつきを持たない多数の住民が各地から移り住んだニュータウンには新たに多数の自治組織がつくられ、住民同士の親睦を深め、地域を活性化するための活動として、各所で盆踊りが行なわれるようになったのだそうだ。展示は解説や写真パネルのほか、盆踊りのための学校校庭使用許可願などの文書、かつて盆踊りのために用いられた手作りの櫓の一部など、ユニークな実物資料で構成されている。ニュータウン開発以降も、街の拡大、自治組織や住民層の変化、老朽化した団地の再開発などで街の姿は変わり続けている。そうした街の変化とともに祭が生まれ、やがてそのかたち、場が変化してゆく様が指摘されていて、とても興味深い。[新川徳彦]
2013/10/11(金)(SYNK)