artscapeレビュー
秋山正仁 展 CROSSROADS
2013年11月01日号
会期:2013/09/30~2013/10/05
Gallery K[東京都]
山梨県在住の秋山正仁の新作展。長大なロール紙に色鉛筆だけで都市風景を緻密に描き出す平面作品を、年に一度東京の画廊で発表している。
今回展示されたのは、主に50年代から60年代のアメリカ文化をモチーフにした作品。絵巻物のように横に長いので右から順に見ていくと、さまざまな色合いで細かく描かれた街並みを貫くクロスロードの随所に、アメ車に乗ったマリリン・モンローやジョン・F・ケネディー、ジェームス・ディーンらが次々と現われてくるのが面白い。
映画や音楽が輝いていた古きよきアメリカ。それらを描き出した画面の奥底に、追慕や憧憬が強く作用していることは間違いない。けれども、秋山の描き出す平面作品には、そうした中庸な言葉には到底収まりきらない迫力がみなぎっている。ノスタルジーと言うには、細部を執拗に描写する執着力が凄まじいからだ。しかし、それらは色鉛筆による柔らかい質感で表現されることによって、執着力がしばしば伴う攻撃性を巧みに回避している。結果として、秋山の絵は見る者の視線をやさしく内側に誘い込むのである。
いつまでも見ていたい。そして絵巻物のように果てしない時間に身を委ねたい。そのように思わせる絵は、思いのほか少ないという点で、秋山の平面作品を高く評価したい。
2013/10/04(金)(福住廉)