artscapeレビュー

水田寛 展「レトロポリス」

2013年11月01日号

会期:2013/09/21~2013/09/29

京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA[京都府]

童画を思わせる画風、複数の時空が複雑に交錯した空間表現、鮮やかな色彩の乱舞といった要素からなる絵画作品30点を、展示室を目いっぱい使ってインスタレーション的に展示していた。こうした最近の水田の作風には、美術教育の影響を受ける前の自分を振り返ろうとする意図が窺える。一度キャンバスに描いた作品を切り取り、別の絵とつなぎ合わせる手法もまた、完成度や構図を気にせず描いていた子ども時代から着想したものだ。描くことへの根源的な欲求に基づきつつ、作品の配置には緻密な計算を凝らしているのも彼らしい。現在の水田の実力を惜しみなく出し切った、気持ちのいい個展だった。

2013/09/24(火)(小吹隆文)

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