artscapeレビュー

本城直季「plastic nature」

2015年09月15日号

会期:2015/07/30~2015/09/12

nap gallery[東京都]

東京・千代田区のアーツ千代田3331内のnap galleryが、同じ建物の中で移転して新装オープンした。手狭だった以前のスペースと比較すると、面積的には3~4倍になり、ゆったりとした展示を楽しめるようになったのは、とてもよかったと思う。
そのこけら落としとして開催されたのが、本城直季の新作展「plastic nature」である。この展示については、水戸芸術館現代美術センターの高橋瑞木が、リーフレットに寄せた文章で以下のように論じている。それによれば、今回の北海道と長野の森と山を撮影した新作は「明らかに彼の旧作と一線を画している」。旧作では大判カメラのアオリの機能によって、画面の一部にのみピントが合って、「ミニチュアの模型」のような感情移入しやすいイメージが生み出されていた。ところが新作では「上空から見る山林の表面だけ」がフレーミングされており、人間も写っていないので、フォーカシングのポイントがはっきりせず、「抽象的でオールオーバーな画面」が成立している。抽象化されている分、観客は具体性や指示性を欠いた画面に戸惑い、「鑑賞者自身の想像力や思考を投影することを余儀なくされる」というのだ。
この高橋の議論は、本城の新作の意図を、とても的確に代弁しているように思える。あまり付け加えることもないのだが、「鑑賞者自身の想像力や思考を投影」ということでいえば、ヘリコプターからの空撮という手法も含めて、松江泰治の「JP」シリーズと比較したい誘惑に駆られる。ボケとシャープネスという一見正反対な画面から受ける印象が、意外に似通ってくるのが興味深い。

2015/08/20(木)(飯沢耕太郎)

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