artscapeレビュー

Art Court Frontier 2015 #13

2015年09月15日号

会期:2015/08/01~2015/09/12

ARTCOURT Gallery[大阪府]

Art Court Frontierは、キュレーター、アーティスト、ジャーナリスト、批評家などが1名ずつ出展作家を推薦し、関西圏の若手作家の動向を紹介する目的で2003年に始まったグループ展。これまでは毎年約10組が参加していたが、今年は4組に絞って各作家の展示スペースの拡大を図り、選抜グループ展というよりも4つの個展が並置されたような充実感があった。
contact Gonzoは、自作の巨大なゴムパチンコで、最大時速100kmで射出されるフルーツを肉体で受け止めるパフォーマンスの瞬間を撮影。広告のように壁面を覆う、縦横2~3mほどの巨大なサイズに引き延ばして展示した。裸の上半身に激突して破裂するフルーツ、飛び散る飛沫。破壊的な力を肉体で受け止め、痛みに耐える彼らの表情は、殉教者のように崇高にも見える一方で、威圧感を与える記念碑的なサイズ感とも相まって、「強い肉体」の誇示やマッチョイズムの称揚にも見えてしまう。
谷口嘉は、可変的なガラスという素材に最小限の手を加えただけの操作の反復により、外光の射し込む廊下の壁面を活かした、美しいインスタレーションを展開。四角く切ったガラスの小片を微妙な角度の変化をつけて壁に取り付けることで、見る角度や距離により、光の反射と陰影が刻々と変化し、有機的な表情を見せる。
東畠孝子は、「セーターに付いたオナモミ」という関係を「角材から垂れ下がる衣服」へと変換したり、「家」の外形をシンプルに表わす形を壁紙でなぞるなど、手触り感や記憶を喚起するような既製品を用い、主と従、内と外といった転換の操作を加えることで、「時間」や「記憶」という本来目に見えない存在の可視化を試みる。
堀川すなおは、言語とドローイングという異なるメディアによる二段階の伝達に加えて、他者の介入を経ることで、同じ対象物に対する「認識」の差異や多様性を視覚的に提示する。出品作は、「バナナ」の形を観察した文章をつくり、それを読んで緻密に描いたドローイング。作家自身による複数のバージョンに加え、ある1名の観察者の記録を、「25人の色々な人種の人が読んで形にする」作品では、同じバナナという対象が、謎の植物組織の図解、原始的な生物の体組織、精密機械の部品や設計図のようにも見え、日常的なコミュニケーションにおいては捨象されている「認識のズレ」の幅を押し広げて、「客観的な認識」と「想像力」との曖昧な領域を出現させていた。

2015/08/08(土)(高嶋慈)

2015年09月15日号の
artscapeレビュー