artscapeレビュー

緑の森の一角獣座 1995-2015 記録

2015年09月15日号

会期:2015/08/03~2015/08/29

ギャラリー福果[東京都]

《緑の森の一角獣座》は、東京・日の出町のゴミ処分場建設に疑問を抱いてトラスト運動に参加した彫刻家の若林奮が、建設予定地の森のなかにつくった作品のこと。作品といっても森の下生えを整備して道や階段をつけ、石を積んで椅子とテーブルにし、せせらぎに橋を渡すといったように、その土地全体を作品化したもので、どっちかというと作庭に近い。こうした方法をとったのは、作品の撤去命令が出ても土地と作品が一体化したものだから撤去できないし、もし撤去(破壊)されたら著作権侵害に当たるという論理で戦うため。文字どおり「地の利」を生かした不動産美術の闘争だったといえる。ところが、作品がつくられたのは事業認定後なので訴えは無効とされ、最終的に行政代執行により「庭」を構成する石や木は撤去されてしまう。この間に「日の出の森と作品を守る会」が結成され、現地を訪れる鑑賞会が何度も行なわれ、ファクスによる『UNICORN NEWS』が配信され、各地で展覧会が開かれてきた。同展ではそれらの写真、映像、文書のコピーなど関連資料を公開している。敗れた(といっていいのか)とはいえ、「芸術の著作権」を盾に戦った日本では珍しい例として、これらの記録は今後ますます重要性が増すだろう。

2015/08/27(木)(村田真)

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