artscapeレビュー

TODAY IS THE DAY:未来への提案

2015年09月15日号

会期:2015/07/26~2015/09/27

アートギャラリーミヤウチ[広島県]

現美から広島駅に出てJRで宮内串戸まで行き、そこからバスのはずだったが、ちょうど行ったばかりなのでタクシーに乗る。ここは財団法人の運営するギャラリーで、モダンなビルの2、3階を占めている。展示はさらに周囲の2軒の民家も使っているので、けっこうなボリューム。わざわざ見に行くだけの価値はある。同展は平川典俊とデイヴィッド・ロスが企画し、飯田高誉が監修したもので、第2次大戦から3.11まで繰り返される悲劇に対して、芸術は肯定的なヴィジョンを示すことができるかを問う試み。出品はヴィト・アコンチ、ピピロッティ・リスト、リュック・タイマンス、ビル・ヴィオラ、アピチャッポン・ウィーラセタクン、奈良美智、小沢剛ら16人で、驚くべきは大半の作家が今回のために新作を出してることだ。アコンチは最近日本で、カメラに向かって指を指し続ける映像《センターズ》が注目されているが、今回はそれを44年ぶりにリメイクした《リ・センターズ》を公開。指を指してるのが映像を見る観者に向かってではなく、カメラの下のモニターに映る自分に対してであることを明確にしたとのことだが、髪が薄くなってるのが気になる。小沢は、福島の子どもが描いた人の顔を小沢自身が模写して横一線に並べている。子どもの絵を模写するというのが意表を突く。いちばん感心したのは伊藤隆介の2点で、1点は破壊された原子炉に出入りする映像がスクリーンに映し出され、手前にはお菓子の箱などでつくったちっちゃな原子炉と、前後に動くマイクロカメラが置いてあるという仕掛け。もう1点は、核爆弾が雲を貫いて落ちてくる映像とその装置で、映像には映らない位置に恐竜のフィギュアが置いてあったりして、思わず笑ってしまう。彼の作品は何度か見たが、見るたびに感心する。

2015/08/21(金)(村田真)

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