artscapeレビュー

裸って何? 現代日本写真家のヌードフォト2015

2015年09月15日号

会期:2015/08/25~2015/08/30

ギャラリー新宿座[東京都]

1990年代は「へアヌード」のブームなどもあり、写真におけるヌード表現はより開放的な方向へ向かうのではないかと思われた。ところが、2000年代以降のネット社会の成立とともに、逆に裸体の露出に対して、自己規制を含めた圧力が強まっているように感じる。TVや新聞などでは、おとなしいヌード写真でも発表がむずかしくなってきているし、昨年8~9月に愛知県美術館で開催された「これからの写真」展に出品された鷹野隆大の作品「おれと」が、官憲の介入で画像の一部を布で覆って展示せざるを得なくなったことも記憶に新しい。
そんな中で、写真における「裸」の意味について、あらためて考え直そうという意図で企画されたのが「「裸って何? 現代日本写真家のヌードフォト2015」展である。出展者は大坂寛、金澤正人、菅野秀明、憬(Kay)、小林伸幸、小山敦也、今道子、白鳥真太郎、杉浦則夫、鈴木英雄、高井哲朗、谷敦志、東京るまん℃、中村 、中村成一、永嶋勝美、ハヤシアキヒロ、舞山秀一、水谷充、宮川繭子、村田兼一、山田愼二、善本喜一郎の23人。過激な緊縛写真の菅野秀明や杉浦則夫から、日本広告写真家協会会長の白鳥真太郎の「芸術的なヌード」まで、まさに百花繚乱の作品が並んでいた。プリントのクオリティにこだわる大坂寛や今道子の作品と、チープなデジタル写真が同居し、最年少25歳の宮川繭子は、プライヴェートな空間でのセルフヌードを披露した。写真家たちの年齢、経歴、作風はまったくバラバラ、表現の幅も驚くほど広い。逆にいえば、ヌードというテーマに潜む奥深さ、底知れなさが、極端に引き裂かれた写真群に露呈しているといえるだろう。
このような企画は、一回限りで終わるのはもったいない。回を重ね、さらに参加者の数を増やし、海外の写真家たちにもアピールしていけば、ヌード写真の冬の時代に、新たな展望が開けてくるのではないだろうか。

2015/08/25(火)(飯沢耕太郎)

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