artscapeレビュー
京都市京セラ美術館リニューアル・オープン記者発表会
2019年05月15日号
国際文化会館[東京都]
公立美術館としては東京都美術館に次いで2番目に古い京都市美術館が、来年3月のリニューアル・オープンに向けて現在改修工事中だが、なぜかこの時期に東京で記者発表するという。同館がネーミングライツで「京都市京セラ美術館」に改称することになったのは2年前の話だし、以前ナディッフにいた元スタッフたちが新たに加わったらしいが、そのためにわざわざ記者発表するだろうか。ひょっとしてなにかあるのかもしれないとわずかな期待を抱きつつ行ってみたら、なるほどそういうことだったのか。
最初は建築家の青木淳および青木事務所出身の西澤徹夫が手がけたリニューアルの概要を説明。大がかりな増改築としては、まずエントランス前の広場を掘り下げ、スロープを下って入館する構造にしたこと、もうひとつは本館の裏に、先端的な表現に対応できる約1,000平方メートルの展示スペースを増築したことだ。ほかにも、二つある中庭のひとつにガラスの大屋根をかけて室内空間にしたり、新進アーティストの発表の場として「ザ・トライアングル」を新設したり、コレクションの常設展示室を設けたり、おもに現代美術に対応できる体制にシフトしているのが特徴だ。
そして新館長の発表が行なわれたのだが、新しく館長に就任したのは、なんと青木淳その人。あれれ? 一瞬、頭が一回転してしまった。リニューアルの受注者が発注者になるの? だいたい美術館と建築家は、それぞれ理想とする美術館のイメージが異なるため仲が悪いってよく聞くけど、大丈夫なの? 青木さんは館長になってからもほかの美術館を設計することはあるの? 次々と疑問が湧いてくるが、でも青木さんなら市の役人なんかよりはるかに美術館のハードにもソフトにも詳しいだろうし、コレクターでもあるから美術に対する理解も深いはず。考えてみればこんなに館長にふさわしい人はいないとも思う。灯台下暗しってやつですね。ようやく東京で記者発表する理由がわかった。
2019/04/09(火)(村田真)