2019年10月15日号
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artscapeレビュー

横浜開港160年 横浜浮世絵

2019年05月15日号

会期:2019/04/27~2019/06/23

神奈川県立歴史博物館[神奈川県]

幕末から明治初期にかけて、西暦でいえば1850年代末から1880年ごろまでの20年あまりのあいだに横浜で描かれた浮世絵を公開している。出品は、浮世絵コレクターとして知られる丹波恒夫と斎藤文夫が集めた計330点にも及ぶ(前期と後期で総入れ替えするので半分しか見ていない)。失われたものも相当あるはずだから、いったいどれだけ描かれたのか。浮世絵は1点ものの絵画と違って売れてなんぼの商売なので、次々と新しいモチーフを発掘して作品化しなければならない。その点、幕末の横浜は黒船来航から開港、異人さんの姿、洋館、鉄道まで目新しいモチーフにこと欠かなかったので、次々と出版することができたのだろう。横浜市史にとっての浮世絵も重要だが、近代浮世絵史における横浜の重要性についても再考する必要がありそうだ。

興味深い作品がいくつかあった。「横浜売物図絵」シリーズには、海を渡ってきた西洋画らしき画中画が描かれているが、どう見ても浮世絵。そりゃ、西洋画を浮世絵で描けといわれても西洋画にはならず、浮世絵になってしまうわな。また横浜ではなく、亜墨利加、英吉利、仏蘭西など西洋の都市風景を描いた絵もある。おそらく銅版画かなにかを参照したのだろう、稚拙ながら遠近法も試みているところがいじらしい。

ずっと見ていくと、野毛、馬車道、海岸通、吉田橋などなじみのある地名が出てきて、だいたいどこを描いているか推測できるが、現在も残っている建築がひとつもないことに気づく。あえて強調するが、開港からたった160年しか経っていないのに、ひとつも残っていないのだ。横浜は神奈川県本庁舎や開港記念会館といった歴史的建造物が残っているのが自慢だが、それとて関東大震災後に建てられたもので、まだ100年もたっていない。吹けば飛ぶような歴史の浅さ……。それだけになおさら、こうした紙媒体の記録は重要度を帯びていくに違いない。

2019/05/17(金)(村田真)

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