artscapeレビュー

荒木悠「LE SOUVENIR DU JAPON ニッポンノミヤゲ」

2019年05月15日号

会期:2019/04/03~2019/06/23

資生堂ギャラリー[東京都]

作品は全部で10点ほど出ているが、メインは《The Last Ball》という映像。ピエール・ロティの紀行文「江戸の舞踏会」を下敷きにした芥川龍之介の短編小説『舞踏会』に基づくという。スクリーンは壁面と宙づりの2面あるが、宙づりのスクリーンは表裏に映されるので計3面になる。まず壁面を見ると、西洋人の男性(ロティ)と日本人の女性(明子)がワルツを踊っているように見えるが、よく見ると2人はお互いに追いかけながらiPhoneで相手を撮っているようだ。宙づりスクリーンの片面には女性を撮っている男性が、もう一面には男性を撮っている女性が、それぞれiPhoneをこちらに向けながら逃げ回るように映っている。見る(撮る)者が見られ(撮られ)、見られる(撮られる)者が見る(撮る)。これがロティ(および明子)の視線だとすれば、それを見る(撮る)第三者の視線は芥川の視線に重なるだろうか。非常に重層した構造をもった作品。

2019/05/10(金)(村田真)

artscapeレビュー /relation/e_00048202.json l 10154745

2019年05月15日号の
artscapeレビュー