artscapeレビュー

櫛野展正のアウトサイド・ジャパン展

2019年05月15日号

会期:2019/04/12~2019/05/19

Gallery AaMo[東京都]

数年前、広島県福山市にある鞆の津ミュージアムが密かに話題になった。名勝として知られる鞆の浦のローケーションや、昔ながらの土蔵を改装した建物もさることながら、死刑囚の作品を展示した「極限芸術」、不良文化を探る「ヤンキー人類学」、暴走老人を集めた「花咲くジイさん」など、過激な展覧会を矢継ぎ早に開いたからだ。これらを企画したキュレーターの櫛野展正氏が独立して、アウトサイダー・アートを紹介するクシノテラスというギャラリーを開設し、その活動の集大成として昨年『アウトサイド・ジャパン』を上梓。その出版記念を兼ねたのがこの展覧会だ。

アウトサイダー・アートというと、おもに精神障害者など美術教育を受けていない人たちによる作品を指すが、ここではもう少し広く、ひたすら役に立たないものづくりに没頭する若者や、退職後いきなり創作を始めた老人など、一見フツーの生活者たちによる知られざる表現を含む。共通しているのは、だれがなんといおうと自分の好みに忠実であること、ワンパターンとバカにされてもひとつのことにこだわり続けること。つまり彼らは空気を読まず、同調圧力にも屈しない強靭なる精神の持ち主だといえるだろう。

例えば、清掃員をやりながら絞った雑巾ばかり延々と描いたり、自作の仮面を2万点以上もつくって創作仮面館を開いたり、自分が食べた食事を記憶を元に描き続けたり、自宅にピンクの絵や人形やお菓子のオブジェを飾ってピンクハウスに変えたり、5千匹の昆虫の死骸で新田義貞像をつくったり……。なぜそんなことをするのか他人には理解できないようなことをやり続けているのだ。出品者は72人と多いが、作品数は2千点以上とケタ違いの多さ。作品を一つひとつ鑑賞するより、全体量で圧倒されるのが正しい鑑賞方法だ。

2019/04/11(木)(村田真)

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