2019年09月15日号
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artscapeレビュー

シャルル=フランソワ・ドービニー展

2019年05月15日号

会期:2019/04/20~2019/06/30

東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館[東京都]

大きな声では言いたくないけど、高校生のころ、ドービニーが好きだった。同じバルビゾン派でもコローやミレーよりも好きだった。ルソーやディアズは問題外だった。似たような絵なのにドービニーだけ好きになったのは、いちばん自然に見えたからだ。なぜ自然に見えたかというと、ひとつには横長の画面が多かったからだ。もともと既製のキャンバスにはF、P、Mの3種類あって(正方形のSは除外)、それぞれFigure(人物)、Paysage(風景)、Marine(海景)のモチーフに適しているが、ドービニーのキャンバスの大半はPかMあたりで、Mよりもさらに横長の、縦横比が1:2くらいの画面も珍しくない。風景はたいてい横に広がるので、ドービニーのように単純に横長のほうが自然に見えるのだ(両目が横に並んでいるのは風景が横に広がっているからだ)。

もうひとつは描き方の違い。コローやミレーのように人物や動物がわざとらしく描かれておらず、色彩や筆触も抑制されて、ルソーやディアズみたいな売り絵のような安っぽさがなかったからだ。この差は微妙なところで、言葉で言い表すのが難しい。今回は最初の部屋にこれらバルビゾン派の作品が出ているので(小品ばかりだが)、比べてみることができる。その結果なんとなくわかったのは、ほかのバルビゾン派の画家たちが興味あるのは「人間」であるのに対し、ドービニーが興味あるのは「自然」だということ。もう少し詳しくいうと、バルビゾン派が自然より人間のほうが大きい(自然<人間)と考えるのに対し、ドービニーは人間を自然のなかの小さな存在にすぎない(自然>人間)と考えているのではないか。これがおそらく、ドービニーの絵が「自然」に見える理由だと思う。

2019/04/21(日)(村田真)

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