artscapeレビュー
The 10th Gelatin Silver Session──100年後に残したい写真
2019年05月15日号
会期:2019/04/26~2019/05/06
アクシスギャラリー[東京都]
ゼラチンシルバーセッション(GSS)の企画は、2006年に藤井保、広川泰士、平間至、瀧本幹也の4人が、互いのネガを交換してそれぞれの解釈でプリントした作品を展示することからスタートした。それから13年、今回の10回目の展示で、その活動は一応の区切りを迎えることになった。
今回参加した写真家は50名で、それぞれ銀塩プリントによる未発表作品を出品し、「100年後に残したい写真」というテーマに沿ったコメントを寄せている。顔ぶれを見ると、前記の4人に加えて三好耕三、百々俊二、ハービー・山口、操上和美、水越武、今道子、若木信吾、中藤毅彦といったベテラン、中堅作家、さらには草野庸子、小林真梨子といった1990年代生まれの若手写真家も含まれており、バランスがとれたラインナップになっていた。展示作品を収録した小冊子所収のテキスト(執筆者不明)には「アナログがおもしろいと感じるデジタルネイティヴの若い世代が増えてきている」こと、そして「そんな彼らに思いを託して私たちのバトンを渡します」と記されているが、主催者側の「思い」は充分に伝わってきた。
ただ、この企画がスタートした2006年の頃と比較して、銀塩写真をめぐる環境は相当に厳しくなってきている。フィルムや印画紙の生産・供給が先細りになっていることに加えて、デジタル化の技術的な進化で、銀塩写真に特有のものとされてきた画像のクオリティの優越性が、絶対的なものではなくなりつつあるからだ。本展に出品した写真家たちのほとんどが、写真の仕事においてはデジタルカメラやプリンタを使っているはずで、「なぜ、銀塩写真なのか?」という問いかけに答えるのはさらにむずかしくなっているのではないだろうか。ゼラチンシルバーセッションの活動が今後どのように続いていくかは未知数だが、これまでとは違う段階に入ることは確かだろう。
なお、同時期にフジフイルム スクエアでも別ヴァージョンでの「ゼラチンシルバーセッション」展が開催された。(4月26日〜5月9日)創設メンバーの4人による第1回展を再構成した「藤井 保 広川泰士 平間 至 瀧本幹也」──すべてはここからはじまった──展と、モノクロームのネオパン100 ACROSフィルムを使って39人の写真家が撮り下ろした作品を展示する「FUJIFILM ACROSS × 39 Photographers」展のカップリング企画である。こちらもかなり見応えのある好企画だった。
2019/04/29(月)(飯沢耕太郎)