artscapeレビュー
BONE MUSIC展
2019年05月15日号
会期:2019/04/27~2019/05/12
BA-TSU ART GALLERY[東京都]
「BONE MUSIC展」。訳すと、骨音楽? 骨を打楽器や管楽器のように使うのだろうか? チラシには手のひらのレントゲン写真が使われているが、よく見ると輪郭が円形で真ん中に黒い穴があり、レコードのようだ。つまり廃棄されたレントゲン写真をレコード盤にリサイクルしたものを展示しているのだ。
これは1940-60年代に旧ソ連で実際につくられ、使われていた非合法のレコード。冷戦時代のソ連では音楽をはじめ美術や文学など表現の自由が規制され、西欧文化が検閲されていた。それでもジャズやビートルズなど好きな音楽を聴きたい音楽ファンが、病院で不要になったレントゲン写真に目をつけ、自作のカッティングマシンでその表面に溝を彫って録音し、仲間内で売買していたのだという。78回転で片面だけ、録音は3分程度、蓄音機で10回も聴けばすり減ってしまったそうだ。ソノシートをさらにペラペラにしたような感じか。それでも需要が多く、地下で1枚「ウオッカ4分の1瓶」くらいの値段で売っていたらしい。どういう価値基準だ!?
同展のキュレーターは、作曲家で音楽プロデューサーのスティーヴン・コーツと、カメラマンのポール・ハートフィールドの両氏。コーツ氏がロシアへの旅行中に蚤の市でレントゲン写真のレコードを「発見」、レコードを買い集めると同時にその歴史背景も研究し、各地で展覧会を開いてきた。表面に頭蓋骨や肋骨の写ったレコードはなかなかオシャレだが、それよりなにより、表現を弾圧する国家がいまでもあること(他人事ではない)と、弾圧されれば知恵を絞って対抗手段を考えなければならないことを、「BONE MUSIC」は教えてくれる。ロシア人もなかなか「骨」があるな。
公式サイト:http://www.bonemusic.jp/
2019/04/26(金)(村田真)