artscapeレビュー
エア・ヴァスコ「Defining Darkness」
2009年08月15日号
会期:2009/06/27~2009/08/09
G/P GALLERY[東京都]
恵比寿のG/P GALLERYでも、ヘルシンキ・スクールの若手作家であるエア・ヴァスコ(1980年生まれ)の個展が開催されていた。2005年から一年間、武蔵野美術大学にも留学経験があるというヴァスコの作品は、他の写真家たちとは違って、フィンランドの自然環境とは切り離された、より内面的な抽象世界を形成しており、同じヘルシンキ・スクールといってもそのスタイルや題材にかなりの幅があることがわかる。
彼女が「暗闇」(darkness)にこだわるのは、少女時代の記憶にその源泉がある。「カーテンの影や床に散らばった服の生地で形づくられた幽霊やスパイ、モンスターのようなもの」が、暗闇を写真によって「定義」(define)し直すことで、ふたたび画面の中に召喚されるのだ。事物の表層的な色彩や質感にこだわるヴァスコ写真の感触は、日本の同世代の小山泰介や西澤諭志とも通じるものがあるように感じる。世の東西を問わず、似たような物の見方があらわれてきているのだろうか。
2009/07/09(木)(飯沢耕太郎)