artscapeレビュー

ル・コルビュジエ/ポール・オトレ『ムンダネウム』

2009年08月15日号

発行所:筑摩書房

発行日:2009年7月9日

1920年代後半、ル・コルビュジエはジュネーヴに国際的な文化研究センター、ムンダネウムの設計を依頼された。企画したのは、書誌学に詳しいベルギーのポール・オトレである。基本理念は人類の統一、そしてよりよい文明をめざす自由な連合の運動だった。ここでは世界美術館と世界図書館の創設がうたわれ、ル・コルビュジエがかたちを与えている。すさまじい野心ゆえに、アーティストの彦坂尚嘉の提唱する皇居美術館空想や帝国美術館のプロジェクトが思い出された。とくに世界美術館は、四角い螺旋状のピラミッドであり、中心に地球儀を置く。『ムンダネウム』自体は知られざる短いテキストだが、訳者の山名善之の解説は、ここから無限成長美術館のアイデアが発展し、上野の国立西洋美術館に至る過程を明らかにしている。

2009/07/31(金)(五十嵐太郎)

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