artscapeレビュー
『Landscape of Architectures Volume 6』
2009年08月15日号
発行所:アップリンク
発行日:2009年8月7日
アップリンクの建築DVDシリーズ、ランドスケープ・オブ・アーキテクチュアズの第6段。今回はわりと歴史的な建築が多い。取り上げられた建築物は6つ。1.王のモスク[イスファハーン]、王の広場に面したモスクで、ラピスラズリの鮮やかな青が異様なくらい美しい。2.サッカラの階段状ピラミッドは、エジプトにおける死者のための建築であり、もっとも古い建築の原型を見ることができる。3.ルクセンブルク・フィルハーモニー管弦楽団コンサートホール(クリスチャン・ド・ポルツァンパルク)は、音楽の運動性を取り入れた「運動体としての建築」である。4.ムニエのチョコレート工場(ジュール・ソルニエ、ジュール・ログル、ステファン・ソヴェストル)は、初期の鉄骨造建築として有名なもの。隣の鉄筋コンクリート造の先駆的な建物はあまり知られていないが、映像では両者を見ることができる。5.SASロイヤルホテル(アルネ・ヤコブセン)は、ヤコブセンによるコペンハーゲンのホテル。14本のケーブルで吊られた優雅ならせん階段、洗練された家具や備品など、見所が多い。6.セント・パンクラス駅(ジョージ・ギルバート・スコット、ウィリアム・バーロー)は、技術者と建築家によるもの。技術と芸術の隣接関係が見られるのは興味深い。いずれも、建築の時間を超えた力を感じさせる映像である。このシリーズは、フランスで制作されたDVDの翻訳版であるが、必ずしも注目度の高い有名な作品を選ぶわけではなく、新しい発見を促すような独自の選択をしているところに好感が持てる。筆者は五十嵐太郎氏、櫻井一弥氏とともに、字幕監修解説を担当した。
2009/07/31(金)(松田達)