artscapeレビュー

遠藤勝勧『スケッチで学ぶ名ディテール──遠藤勝勧が実測した有名建築の「寸法」』

2009年08月15日号

発行所:日経BP社

発行日:2009年4月27日

菊竹清訓事務所にて、長く番頭をつとめてきた遠藤勝勧が、いかに建築と向きあってきたかを伝える一冊。巨匠のもとにいたときは、すべての仕事の記録をとり、やがて1960年代のアメリカ旅行を契機に、気になったディテールの実測を行なうようになった。測ったりスケッチを描くと、建築家が何をどんな風に考えたのかがよく分かって嬉しくなるという。なるほど、もとは図面だった情報が実体化するだけだが、それを再度、図面に戻す行為である。写真は、空間の雰囲気を伝えるかもしれないが、実測は建築の思考を解体していく。本書は、名作から近作まで、現場でおさえたさまざまな建築の寸法を収録している。宿泊先のホテルの家具も図面化されているのだ。その精度は、かつて妹尾河童がホテルの室内を描いたスケッチを越えている。あらゆるモノを数字によって記述される三次元のオブジェに還元しているからだ。

2009/07/31(金)(五十嵐太郎)

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