artscapeレビュー
土井一秀+小川文象 建築展「World Standard──広島若手建築家二人展」
2009年08月15日号
会期:2009/07/22~2009/08/30
カッシーナ・イクスシー広島店[広島県]
広島の若手建築家である土井一秀と小川文象による二人展。場所はカッシーナ・イクスシー広島店で、店舗として通常営業しつつ、その中に模型やパネル、映像などの展示物を混在させる。ヨーロッパでの経験をふまえて広島で活躍し始めた二人の軌跡は、東京を経由せずに世界とつながる地方建築家のモデルを示しているのではないか(もっとも小川は東京の大学で学んでいるが)。タイトルの「World Standard」にも、そのような思いが込められているだろう。それぞれの作品は対照的で、土井が地形や周辺環境を読み取りつつ作品の根拠とするのに対し、小川は自律的であることで場所に関係なく普遍的に成立する建築を目指す。しかし、そのベクトルが逆を向いているように見えるにもかかわらず、両者ともミニマルへの指向があり、作品が共鳴していたように感じた。ミニマルであるということと、広島であるということに関係性を見いだせそうであるが、これについては根拠のはっきりしない仮説になるので保留する。この展覧会を見に行って感じたのは、二人とも海外との距離をほとんど感じていないという点であり、建築家が地方都市において世界的な視野のもとに活動するという可能性が現われていた。レセプションにて二人のトークイベントに筆者も参加させてもらったのであるが、建築家がローカルなものとグローバルなものをいかにしてつないでいくのかという地方都市であるからこそ考えられる問題について、有意義な議論が闘わされた。
2009/07/26(日)(松田達)