artscapeレビュー

寺島みどり展──見えていた風景

2009年08月15日号

会期:2009.06.21~2009.07.26

奈義町現代美術館ギャラリー[岡山県]

制作の方向性が大きく変わった印象だった最近作を含め、過去からの作品を総括して展示した寺島みどりの個展。記憶の層のように幾重にも塗り重ねられ、描き込まれた色面は、時には息苦しくなるほど圧倒的な雰囲気をもち、ときにはどこまでも穏やかな静寂を感じさせる。そこはかとなく、というと根拠も説得力もないようだが、得体のしれない強烈な力が画面から感じられる寺島の作品にいつも気持ちが揺さぶられる。そのときどきによって「見える」風景(やその印象)は少しずつ異なるのだけれど、まるで霧が晴れるときに風景が一気に広がってくるような迫力はどの作品にも共通している。こんなにたくさんの点数を一度に見たのも初めてだったが、作品制作の変遷もうかがえる展示のバランスもよく、見応えのある内容で、高揚感もなかなか退かなかった。奈義町現代美術館は遠いけれど、見ることができて本当によかった!

2009/07/25(土)(酒井千穂)

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