2024年02月15日号
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artscapeレビュー

荒木経惟「POLART 6000」

2009年08月15日号

会期:2009/07/17~2009/08/20

RAT HOLE GALLERY[東京都]

まずはその量に圧倒される。タイトルが示すように、6,000枚のポラロイド写真(実際には少し少ないようだが)が壁にずらっと並ぶ様は壮観としかいいようがない。特に27×97=2619枚(!)が全面にびっしりと貼られた一番大きな壁は、思わず笑ってしまうようなとんでもない迫力である。派手好み、お祭り好きの荒木経惟の面目躍如というべき展示だ。
その祝祭性は写っている被写体にまで及んでいる。ポラロイドでヌードといえば、普通はやや秘密めいた淫微なイメージを想い描くだろう。ポラロイドは現像や焼き付けを業者に出す必要がないので、「危ない」写真を撮るのによく使われてきた。それに加えてフィルムの表面の、つるつるした人工皮膚を思わせる質感そのものもエロティックだ。だが荒木の「POLART」に登場してくるヌードの女性たちは、ひたすら晴れやかでお目出度い。裸体だけでなく、花や食事のようなオブジェも、日々撮り続けられているスナップも、膨大に増殖していくイメージ群は、あっけらかんとした開放的な生命力を発しつつ、大声で呼び交しているように見える。
そのうちの幾つかは、20~100枚くらいの単位でグリッド状に構成されて展示してある。その組み合わせ方が、いかにも荒木らしくウィットと奇想に飛んでいる。それぞれの女性モデルごとに一まとめにした組もあり、「明太子」「パンと牡蠣」のような男性器、女性器への見立ての妙を発揮したシリーズ、ポラロイド・フィルムの表面に直接絵具で書き込んだ「花画」「闇夜2射精」など、抽象画のような作品もある。ポラロイドというシステムの可能性を、ほぼ極限まで、出し惜しみせずに開陳するやり方も、荒木ならではというべきだろう。表現者としての底力に脱帽。まだまだやんちゃな創作意欲は衰えを見せていないようだ。

2009/07/19(日)(飯沢耕太郎)

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