artscapeレビュー
《起雲閣》
2009年08月15日号
[静岡県]
1919年に建てられて以降、増改築を繰り返した熱海の近代建築。日本、中国、ヨーロッパの様式や装飾を融合させた建築で、熱海の三大別荘の一つとも言われた。内田信也、根津嘉一郎、桜井兵五郎という三人の富豪が順に所有し、桜井時代の旅館を経て、現在は熱海市の所有で観光スポットとして見学可能である。意外だったのは金沢との関係で、壁が青く塗られた内田信也別邸は、兼六園にある成巽閣の群青の間を思い出させるのだが、実際、金沢の棟梁がそれと同じ塗料で壁を塗ったという。石川県出身の桜井が連れてきたのだろう。ローマ風浴室、文豪の部屋など、歴史の不思議なコラージュがなされた建築である。
2009/07/28(火)(松田達)