artscapeレビュー

『ka 華』33号

2009年08月15日号

東工大が制作している建築学科の年報である。現在、いろいろな大学でこうした年報を制作するようになった。個性という点では東京芸大の『空間』も興味深いが、内容の密度では、おそらくこれにまさるものはないだろう。一年間の各課題の紹介とレビューはもちろん、茶谷正洋先生の巻頭記事、ニュース・投稿、そして特集「太陽と建築」まである(ときどき英文サマリーも)。毎号毎号、総力戦による充実ぶりには、頭が下がる思いだ。博士課程の学生が中心になって編集したようだが、学生の層の厚さを感じさせる。筆者も東北大にて『トンチク』を制作しているが、最初に考えたのは、簡単に『ka』を越えることはできないから、まったく違うスタイルをとることだった。予算がほとんどないなかで、いかに仕事量を減らしながら、最大限の効果を生むか、である。つまり、『ka』は建築系の大学の年報にとって指標というべき存在になっている。

2009/07/31(金)(五十嵐太郎)

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