artscapeレビュー

2012年09月15日号のレビュー/プレビュー

館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技

会期:2012/07/10~2012/10/08

東京都現代美術館 企画展示室1F・B2F[東京都]

庵野秀明の特撮博物館は、CGの時代にあえて手によるモノづくりのおもしろさをストレートに伝える好企画だ。壊されるための建築模型が大量に並ぶ。ただ初期特撮の貴重な資料はあまり残っておらず、展示物も近年が多い。どこかで常設で存在して欲しい内容である。新作の映像『巨神兵、東京に現る』も短編ながら、庵野テイスト全開の鮮烈な印象を残した。これもCGなどに頼らず、特撮の技術を駆使し、後半の展示で紹介している。

2012/08/16(木)(五十嵐太郎)

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「Arts & Life:生きるための家」展

会期:2012/07/15~2012/09/30

東京都美術館 ギャラリーA・B[東京都]

東京都美術館「生きるための家」展を見る。コンペの最優秀になり、実物大の模型がつくられた山田紗子案は応募作のなかでもっとも力強い建築だった。模型の方がスラブの傾斜がきつく、さらに前衛的である。ともあれ、吹抜けにインスタレーションされることを考えると、屋根や壁で塞がれない状態のデザインは相性がよい。応募作を一覧すると、さまざまな若手の亜流と言える作品が並び、本当に今の日本建築の流行をよく反映している。

2012/08/16(木)(五十嵐太郎)

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KATAGAMI Style──もうひとつのジャポニスム

会期:2012/07/07~2012/08/19

京都国立近代美術館[京都府]

19世紀末から万国博覧会などを通じて西洋に渡った日本の美術工芸品のなかでも型紙にスポットを当てたもので、型紙が西洋の芸術家たちの創作活動にどのような影響を与えたのかを紹介する展覧会。型紙が西洋の美術工芸改革運動のなかで、本来の染色という用途を超えて広がっていった様相を国内外から集めた約400点の作品で俯瞰する会場は、江戸時代に制作された型紙や型紙染めの着物などにより型紙の歴史を概観する第1章にはじまり、英国のアーツ・アンド・クラフツ運動への影響、仏語圏のアール・ヌーヴォー作品への影響、ユーゲント・シュティールなどドイツ語圏における展開、そして現代に受け継がれるデザインと、5つのセクションに分かれていた。息を飲むような繊細な日本の型紙の技術やその文様の美しさが各国の人々を魅了していったという点はよく理解できるのだが、展示された作品は染織からガラス、陶磁器、絵画、ポスター、家具、建築の装飾デザインにまで及んでいて、見ているとだんだんどの点が型紙の影響なのか、そもそもそれが日本の型紙の影響と言えるのか、解らなくなってしまうものも多かった。型紙という括りではなく、日本の美術工芸全般に見られる伝統的文様や意匠からインスパイアされて展開したデザインや作品としたほうが解りやすかったのではないだろうか。華やかで細やかな仕事の美しい作品が多く、充実した内容であったのには違いないのだが。

2012/08/17(金)(酒井千穂)

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すべての僕が沸騰する 村山知義の宇宙

会期:2012/07/14~2012/09/02

世田谷美術館[東京都]

2012年2月から神奈川県立近代美術館 葉山、京都国立近代美術館、高松市美術館、世田谷美術館と巡回してきた「村山知義の宇宙」展は、期待に違わぬ面白さだった。画家、イラストレーター、舞踏家、建築家、演出家、小説家など、さまざまなジャンルを横断し、常に挑発的な作品を発表し続けた村山の全体像を、おそらく初めて概観できるこの展示の意味について語るにはいささか役不足なので、ここでは彼と写真とのかかわりについて、いくつかの角度から指摘するに留めたい。
村山が1922年にベルリンに約1年間滞在した時期は、まさに写真という表現メディアが大きくクローズアップされ始めた時期だった。モホイ=ナジがバウハウスに招聘されて、フォトモンタージュやフォトグラムなどを積極的に授業に取り入れ始めるのが1923年、画期的な小型カメラ、ライカA型がエルンスト・ライツ社から発売されるのが1925年である。当然ながら村山もまた、ドイツで写真の表現力を強く意識したに違いない。
だが1923年に帰国し、「マヴォ」の運動を精力的に展開するなかで、「コンストルクチオン」(1925)のようなコラージュ作品の一部に、フォトモンタージュが取り入れられていることを除いては、彼自身が写真作品を発現することはなかった。ただ彼自身のダンス・パフォーマンスが、写真として記録されることで広く知られるようになったのは確かだし、堀野正雄の写真をフィーチャーした「グラフ・モンタージュ」の「首都貫流──隅田川アルバム」(『犯罪化学』1931年12月号)で「監督・編集」を担当するなど、「芸術写真」から「新興写真」へと大きなうねりを見せていた当時の写真界においても、重要な役割を果たしたのではないかと思う。写真が村山の創作活動全般に、どのような影響を及ぼしたのかについては、今後きちんと検証していくべきテーマのひとつだと思う。日本の近代写真史にも、この異才の活動を組み込んでいくべきだろう。

2012/08/17(金)(飯沢耕太郎)

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奈良美智「君や 僕に ちょっと似ている」

会期:2012/07/14~2012/09/23

横浜美術館[神奈川県]

横浜美術館の奈良美智展へ。11年前に同じ場所で彼の個展を見たとき、画家でありながら、空間の使い方の巧さに感心するとともに、女性がグッズ売り場に大挙するコンサートのような風景に心底驚いたことをよく覚えている。今回は空間演出よりも、板、紙、ブロンズなど、いろいろな素材の試みが印象に残る。興味深いのは、企画展が終わり、常設の部屋に入っても、引き続きコレクションのあいだに奈良の作品を混ぜていたこと。

2012/08/17(金)(五十嵐太郎)

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2012年09月15日号の
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