artscapeレビュー
2015年06月15日号のレビュー/プレビュー
シンプルなかたち展:美はどこからくるのか
会期:2015/04/25~2015/07/05
森美術館[東京都]
森美術館の「シンプルなかたち」展へ。ICCと同様、理系的なアートが多く、楽しいが、古今東西いろんなものがあって、やや拡散しすぎかもしれない。おそらく企画者の関係で、フランスから借りたものが多い。個人的に大巻伸嗣の作品がベストだった。空気の力でふわふわと軽やかに浮かぶインスタレーションは、背後に東京の風景が重なり美しい。
2015/05/24(日)(五十嵐太郎)
山海塾「海の賑わい陸の静寂──めぐり」
会期:2015/05/20~2015/05/31
世田谷パブリックシアター[東京都]
世田谷パブリックシアターにて、山海塾「海の賑わい陸の静寂──めぐり」を見る。その雄大な身体の動きは、舞踏が始まる前からすでに始まっており、終わってからもまだ続いているような雄大な時の流れを感じさせる。さすが40年の年季だ。西洋的でない身体が海外から注目される感じもよくわかる。特に痙攣と最後の挨拶の所作が印象的だった。
2015/05/24(日)(五十嵐太郎)
チャッピー
映画『チャッピー』を見る。ニール・ブロムカンプ監督の『第9地区』に続く傑作である。パトレイバーやアップルシードなど、日本の漫画・アニメをリスペクトするSFの意匠をまといながら、オタク・ガジェットの実写にとどまらず、教育、成長、親子をテーマとした普遍的な物語になっている。最後は、精神/データ的な存在を扱い、映画で設定されているSFの次元が変わってしまうのは気になったが、これは中身が大事という劇中の台詞に通じてはいる。難を言えば、悪役の造形・動機が理解しづらく、あまり深掘りされていないことか。
2015/05/25(月)(五十嵐太郎)
百々武「海流」
会期:2015/05/20~2015/05/29
コニカミノルタプラザギャラリーC[東京都]
百々武は、2015年3月に赤々舎から写真集『草葉の陰で眠る獣』を刊行し、銀座ニコンサロンと大阪ニコンサロンで同名の個展を開催した。東京写真月間の特集「『島』 島は日本の原点」の一環として、コニカミノルタプラザギャラリーCで開催された個展「海流」はそれに続くもので、このところの彼の仕事の充実ぶりが伝わってくるものだった。
百々は2003年に訪れた鹿児島県の屋久島と種子島で、船で1時間ほどの近さなのにまったく異なる環境であることに驚き、「島」を基点にして日本列島をあらためて見直すというアイディアを思いつく。日本最南端の与那国島から北海道の利尻島、礼文島まで精力的に回って、2009年には写真集『島の力』(ブレーンセンター)を刊行した。だが、それ以後も「島」の撮影は続いている。今回の個展には、2003年3月撮影の屋久島から2014年12月撮影の大神島(沖縄県)まで、未発表の43点が並んでいた。
風景、人、モノを柔らかな眼差しで捉え、画面に配置していく百々のカメラワークは自然体で無理がない。豊かな諧調のモノクロームのプリントを見ていると、ゆったりとした空気感に包み込まれる。体内にしまい込まれていた懐かしい記憶に血が通って、少しずつうごめき出すような気がしてくるのだ。ただ、「島」はたしかにいいコンセプトだが、そろそろまとめ方を考えていく時期に来ているのかもしれない。単純に南から北へと写真を並べるだけではなく、それぞれの「島」の共通性と異質性を抽出し、新たな解釈でグルーピングしていく手続きが求められているのではないだろうか。
2015/05/26(火)(飯沢耕太郎)
ルーヴル美術館展「日常を描く──風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄」
会期:2015/02/21~2015/06/01
国立新美術館[東京都]
某文化センターの講座の最終回として見学。内覧会以来3カ月ぶりの訪問だ。会期終了まであと1週間なのでメチャ混みか、でも今日は特別開館日(ふだんは火曜休館)なので、そんな混んでないかも……などと思いながら着いてみると、そこそこ混んでるけど見られないほどではなかった。目玉のフェルメール《天文学者》の前に行くと鑑賞位置が2段構えになっていて、絵の前を通るので間近に見られるけど立ち止まれないというインコース、その外側からちょっと遠いけどゆっくり見られるというアウトコースの2コース制。もちろんインコースを何度回ってもかまわないし、インとアウトを行ったり来たりしてもいい。最近、このように見る人の多様なニーズに合わせ、同時に大量の観客をさばくために鑑賞方式を工夫するところが増えてきた。でもじっくり細部まで見ようと思ったらルーヴル美術館に行くのが一番。それがかなわなければ画集で見るのが二番。とくにフェルメールのような小さな作品は。
2015/05/26(火)(村田真)