2020年10月15日号
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artscapeレビュー

2015年06月15日号のレビュー/プレビュー

Dance Fanfare Kyoto 03 『Don't look back in anger. Don't be long 時化た顔で振り向くな、早くおうちに帰っておいで』

会期:2015/05/30~2015/05/31

元・立誠小学校[京都府]

関西の若手ダンサーと制作者による実験的な企画を通して、関西ダンスシーンの活性化をはかるDance Fanfare Kyotoが、今年で3年目を迎えた。特徴のひとつとして、演劇、音楽、美術などダンス以外の領域の表現者とのコラボレーションに積極的なことが挙げられ、本作はPROGRAM 02「美術×ダンス」として上演された。
それぞれ卓球台とバスケットゴール板に見立てられた、水平と垂直の2枚のキャンバス。2人のペインター(鬣恒太郎、神馬啓佑)がライブペインティングを行なうなか、男女のダンサー(倉田翠、渡邉尚)が水平に置かれたキャンバス上でデュオを展開していく。ペインターとダンサーは水平の台=キャンバスという空間を共有しつつも、描画とデュオの振付はそれぞれ独立した行為として行なわれる。ペインターが青い絵具を塗る。無関係に動くダンサーの手足、胴体、頭が塗られた面を多方向に展開していく。白い絵具が置かれる。ダンサーの滑った手足の軌跡が新たな線を生成させていく。
絵画におけるストロークは画家の身体の痕跡であり、とりわけ抽象絵画と身体性の関係はひとつのトピックを成してきた。本作において、水平に置かれたキャンバス上で描画行為が行なわれることも、ポロックや白髪一雄のペインティングへの参照を示している。ただしそこに、ダンサーという他者の身体を招き入れることで、身体の痕跡は二重化される。ペインターの描いた線は、ダンサーの身体とキャンバスの接触によってその都度引き直され、一方でダンサーの身体は絵具=物質によって滑ってしまい、振付けられた動きを完全に制御できなくなる。
このように本作では、ペインターとダンサーがお互いに干渉し合うことで、予測不可能な生成のダイナミズムがより増幅される。さらに第三項として、「スポーツ」の要素が投入されていた。キャンバス=卓球台/バスケットゴール板への見立てのみならず、体操着を着た出演者たちによって実際のプレイも行なわれるのだ。バスケットボールやピンポン球の動きがダンサー/ペインターの動きを誘発・撹拌するという作用は面白いが、「スポーツ」である演出の必然性がどこまであるのかがやや不透明だった。むしろ、スリリングで目を惹かれたのは、倉田と渡邉のデュオである。相手の体を手足で支え、物体のように動かそうとする。動く/動かされるベクトルや主導権が絶えず入れ替わる緊張感。限られたスペースで横たえた体を密着させてはいるが、アクロバティックな硬質さを感じさせるなかに、次第に絵具でまみれていく様子がふとエロティックに見えてしまう。そうした相反する要素を醸し出しながら、強い意志に満ちた身体があった。


「Don’t look back in anger. Don’t be long」 撮影:Yuki Moriya


ホームページ:URL:http://dancefanfarekyoto.info/

2015/05/30(土)(高嶋慈)

読売交響楽団 第80回みなとみらいホリデー名曲シリーズ

会期:2015/05/30

横浜みなとみらいホール[神奈川県]

読売交響楽団@みなとみらいホール。ユーリの指揮によって、それぞれに個性が強い三曲を楽しめた。最初のリムスキー=コルサコフ「シェヘラザード」では、日下紗矢子による異国情緒を感じさせる、艶やかなヴァイオリン独奏の音色。続いて、ラヴェルの「左手のためのピアノ協奏曲」は、タイトルどおり、戦争で片手を失ったピアニストのためにつくられた曲だが、河村尚子が力強く、片手だけを使い、演奏を行なった。そして「ダフニスとクロエ」では、難易度が高いフルートの長いソロである。

2015/05/30(土)(五十嵐太郎)

NICKELBACK NO FIXED ADDRESS TOUR ニッケルバック ノー・フィックスド・アドレス・ツアー

会期:2015/05/30

東京体育館[東京都]

ニッケルバック@東京体育館。ギター・ソロはほとんどがないが、とにかく声と曲がいい。そしてグルーヴ感のあるリズムが、ぐいぐいと引張っていく。最近、足を運んだインペリテリ@ TSUTAYA O-EASTとは、対照的なバンドだった。このときはヴォーカルとベースがほぼ見えない位置だったが、世界最速とされるギターのクリスだけは見える。このバンドなら、それで十分だ。演奏は思っていたよりも、タッピングが多い。

2015/05/30(土)(五十嵐太郎)

プレビュー:村川拓也『エヴェレットゴーストラインズ』4バージョン連続上演

会期:2015/07/10~2015/07/12

京都芸術センター[京都府]

KYOTO EXPERIMENT 2014 にて上演された村川拓也の演劇作品『エヴェレットゴーストラインズ』のコンセプトを引き継ぎつつ、新たにつくられた4つのバージョンを連続上演する試み。
「出演者未定の演劇作品」である『エヴェレットゴーストラインズ』の基本コンセプトは、「演出家が出演者候補に前もって手紙を送る」「手紙には、劇場を訪れる時間と観客の前で行なう行為が指示されている」「当日劇場に来るかどうかは受け取った人が決める」というもの。ある一定の上演時間と舞台空間を設定し、入退場時のハケ方と舞台上で行なう行為を指定すること。村川は、演劇の構造的原理を「時空間の共有と行為の指示」へと還元し、裸形にして差し出しつつも、「手紙」という間接的な伝達手段やコントロールの放棄によって、再現(再演)不可能な一回性の出来事へと近づけていく。要請に応じた出演者たちが舞台上に現われる時間と現われない不在の時間が交錯し、上演ごとに揺らぎを伴った不確定性へと開かれていく。
さらに、今回の4バージョン連続上演の試みでは、Ver.A「赤紙」(初演時の出演者が手紙を別の人に渡し、受け取った人はさらに別の人に渡す)、Ver.B「顔」(ある死の記憶を共有する特定のグループ数名の出演者達による上演。一人につき何枚かの指示が配られるが、どの指示に従うかは当人次第)、Ver.C「記録」(記録にまつわる作業集団 “ARCHIVES PAY” との共同制作。あらゆる記録装置を舞台に持ち込み、現場の一回性とその記録によって生まれるもう一つの時間軸を内包させたまま上演が展開する)、Ver.D「集団」(ティッシュ配りの要領で、街に出て大量の手紙を不特定多数の人々に配る。もっとも不確定要素の強いバージョン)が予定されている。
新たな、そして複数の条件づけによって、観客はどのような出来事を体験するのか(あるいは体験できないのか)。スリリングな期待を抱かせるとともに、「参加」を要請する枠組みや従う/従わないの判断を巡って、「作品」に対する責任の所在やある種の権力関係についても考えさせる上演になるだろう。

2015/05/31(日)(高嶋慈)

プレビュー:やなぎみわ『ゼロ・アワー 東京ローズ最後のテープ』

会期:2015/07/18~2015/07/19

京都芸術劇場 春秋座[京都府]

やなぎみわが作・演出・美術を手がけた演劇作品「ゼロ・アワー 東京ローズ最後のテープ」。2013年に神奈川芸術劇場とあいちトリエンナーレで上演された後、2015年1~2月にかけて北米ツアーが行なわれ、今回はその凱旋公演となる。「ゼロ・アワー」とは、太平洋戦争中に日本政府が英語で連合国軍向けに発信していたプロパガンダ・ラジオ番組の名称。アナウンサーとして従事していた日系女性の中でも、特に魅力的な声の持ち主は、南太平洋で戦う米兵たちによって「東京ローズ」と呼ばれ人気を博す。本作はこの事実を踏まえつつ、「東京ローズ」の正体をめぐって対立する2人の男性(日本人の録音技師と日系2世の米軍通信兵)のドラマが展開される。
国内では2年振りの再演だが、北米ツアーと同様の演出で、英語での上演(日本語字幕付き)となる。また、キャストを一部入れ替え、ダンサーを採用することで、より身体性の強い演出になるのではと期待される。太平洋戦争終戦から70年という節目、集団的自衛権をめぐる同時代的危機感、またサブタイトルがベケットの戯曲『クラップの最後のテープ』を示唆するように、戦争や国家とメディア、メディアにのった声と身体性、声の操作・複製・拡散、案内嬢の制服をまとったアナウンサーたちが象徴する均質化・匿名化された女性身体、などさまざまなことを問いかける再演となるだろう。

2015/05/31(日)(高嶋慈)

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