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artscapeレビュー

BIWAKOビエンナーレ2012「御伽草子──Fairy Tale」

2012年12月15日号

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会期:2012/09/15~2012/11/04

近江八幡旧市街地、東近江市五個荘[滋賀県]

近江商人発祥の地、近江八幡市八幡堀一帯の使われなくなった日本家屋を会場に、国内外のアーティストの作品を展示、公開するアートイベントとして開催されてきたBIWAKOビエンナーレ。開催5回目を迎えた今回は、これまでの近江八幡市旧市街に加え、同じく江戸期から続く商人屋敷が多く残る東近江市五個荘にも会場が広がり、出品作家も70組以上になった。地域、参加作家の数ともにスケールアップしたのはいいが、なにしろ会場同士が離れているのがネック。一日で両方のエリアをすべて見てまわるのには、交通手段や展示場所などを事前にチェックして、計画を立てておかねば難しい。私は残念ながら五個荘エリアに足を運ぶ時間がなく、今回見れたのは近江八幡エリアの展示のみ。それでも8カ所の展示を見てまわるとあっという間に一日が過ぎた。今回のテーマ「御伽草子──Fairy Tale」というキーワードとはあまり関係なさそうな作品もあったが、見たなかでは旧中村邸で開催されていた大和由香の石灰石を用いたインスタレーションが印象に残った。大和の作品は、この家が石灰石を扱う商いをしていたという文献からヒントを得て制作されたものだという。石がそこら中に散らばっていたり積み上がっているのだが、古い建物の匂いと窓から射し込む光に包まれた空間で、時の経過とそこでの物語を喚起するものだった。また、素晴らしかったのは、八幡山の山上にある瑞龍寺で行なわれていた大舩真言の作品展示。襖に雲の模様が描かれた「雲の間」でのインスタレーションだったのだが、大舩の2点の作品はこの空間独特の趣きに、より深遠な情趣を与える静謐な絵画で、いつまでも眺めていたいほどだった。八幡山山上と、ほかの会場からも離れた場所だったが見ることができてよかった。


左=旧中村邸。大和由佳によるインスタレーション(近江八幡エリア)
右=村雲御所瑞龍寺門跡。「雲の間」大舩真言の作品《VOID α》(近江八幡エリア)

2012/11/04(日)(酒井千穂)

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