2017年05月15日号
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artscapeレビュー

笹岡啓子「VOLCANO」

2012年12月15日号

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会期:2012/10/23~2012/11/04

photographers’ gallery/ KULA PHOTO GALLERY[東京都]

今回の笹岡啓子「VOLCANO」の被写体は北海道・大雪山の旭岳と三宅島。その広々とした火山地帯の風景を、90×70.5�Bの大判プリントに引き伸ばした写真が二つのギャラリーにゆったりと並んでいた。笹岡は一貫して風景の中に小さく人の姿を配した写真を発表してきたが、今回もその例に洩れない。このテーマは、たしかに自然対人間の関係を問うものといえる。だが、普通よく取りあげられるように、自然と人間とを対立・拮抗して捉えるものではない。笹岡の写真では、なぜか両者とも、どこかはかなく消えてしまいかねない脆さ(弱さ)を抱え込んでいるように見えてくるのだ。その寄る辺のない印象をより強めているのが、霧、靄、水といった要素なのではないだろうか。それらをいわば自然と人間を包み込み、その中に浸透していく媒体として、繊細に、注意深く画面に写し込んでいくことによって、彼女の風景写真に特有の、肌理の細かい肌触りが生じてきている。霧に巻かれるようにして旭岳の稜線を行軍する自衛隊の兵士たちが、まるで道に迷った頑是無い子どもの集団のように見えるのがとても印象深かった。
なお、展覧会にあわせて小冊子の写真集『Remembrance12──旭岳』『同13──旭岳』『同14──三宅島』の3冊が刊行された。東日本大震災の被災地を撮影することから開始された『Remembrance』のシリーズが、このように大きく広がりつつあるのはいいことだと思う。刊行はさらに続いていくということなので、今後どんなふうに展開していくのかが楽しみだ。

2012/11/04(日)(飯沢耕太郎)

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