2017年12月15日号
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artscapeレビュー

クロダミサト「沙和子」

2012年12月15日号

会期:2012/11/21~2012/12/15

神保町画廊[東京都]

クロダミサトは2009年に写真新世紀でグランプリを受賞後、「沙和子」と名づけたシリーズを撮影しはじめた。2010年にリブロアルテから写真集として刊行された『沙和子』は、同年代の若い女性のヌードをさまざまなシチュエーションで撮影したシリーズである。かなりあからさまに男性向きの「エロ本」のポーズを引用したこの作品では、写真家とモデルは楽しげに、のびのびと写真撮影の時空間を共有している。今回の神保町画廊での展示の中心になっているのは、個展の形では初めての公開となったこのシリーズだが、同時に新作の「無償の愛」も展示されていた。
「無償の愛」は同じモデルを、やはりヌードや下着姿で撮影した連作だが、『沙和子』とはかなり肌合いが違う。クロダの故郷でもある三重県の、なんとも素っ気ない即物的な風景の中で、モデルの彼女がシンプルなポーズをとっている。『沙和子』のような悪戯っぽい挑発性は影を潜め、どちらかといえば素っ気ない、自然体の表情の写真が並ぶ。わずか2年あまりの時間差であるにもかかわらず、ちょっとスリムになったひとりの女性の軀と心の変化が、鮮やかに刻み付けられているのが興味深かった。もう少し長く撮り続けていくと、また違った感触の写真が出てきそうな気がする。それとともに、愛おしさと探究心に突き動かされつつ、血の流れを感じ取れるくらいの近さでシャッターを切っていくクロダのスタイルは、他のモデルを撮影した場合でも、じわじわと面白い形をとっていくのではないかと感じた。

2012/11/29(木)(飯沢耕太郎)

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