2018年04月15日号
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artscapeレビュー

西村陽一郎「山桜」

2016年04月15日号

会期:2016/03/18~2016/03/27

みんなのギャラリー[東京都]

西村陽一郎は、これまで印画紙の上に置いたモノに光を当ててそのフォルムを写しとるフォトグラムの手法で作品を制作してきた。今回東京・半蔵門のみんなのギャラリーで展示された「山桜」のシリーズでは、そのフォトグラムをデジタル化した手法を用いている。名づけてスキャングラム。スキャナー上に被写体を置いて、そのデータを元にプリントする方法だ。特筆すべきなのは、そのデータからネガ画像を出力していることで、結果として被写体の色相が補色に反転する。つまり赤っぽい色は青や緑に変わってしまうわけで、「山桜」なら赤っぽい雌蕊や若葉の部分が、青みがかった色に見えてくる。さらに通常のフォトグラムと違って、花弁や葉のディテールが、まるでレントゲン写真のような精度で写り込むことになる。花々が本来備えている神秘性、魔術性が、この手法によってさらに強調されているともいえる。
今回の「山桜」の展示を見ると、スキャングラムには、さらに表現の幅を広げていく可能性がありそうだ。西村はこの手法を使って、「山桜」だけでなく、ほかの植物群も含めた「青い花」のシリーズをまとめようとしている(6月に同ギャラリーから写真集として刊行予定)。だが、スキャングラムはもっとさまざまな被写体にも応用が効くのではないだろうか。例えばスキャングラムによるポートレートやヌードも面白そうだし。複数の画像をモンタージュすることも考えられるだろう。デジタル化の急速な進展にともない、これまでではとても考えられないような画像形成の可能性が生じてきている。今回はオーソドックスなフレーム入りの展示だったが、会場のインスタレーションにも工夫の余地がありそうに思える。

2016/03/18(金)(飯沢耕太郎)

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