2020年07月01日号
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artscapeレビュー

あこがれのヴェネチアン・グラス──時を超え、海を越えて

2011年09月01日号

会期:2011/08/10~2011/10/10

サントリー美術館[東京都]

皇帝の愛したガラス」展(東京都庭園美術館、2011年7月14日~9月25日)が、ヨーロッパにおけるガラス工芸の歴史を追う構成になっているのに対し、本展は15世紀を起点にヴェネチアン・グラスの技法や様式がヨーロッパ各地のガラス工芸へ与えた影響を探る。それゆえ、展示の中心はヴェネチアン・グラスへの「あこがれ」のもとに成立したヨーロッパや日本のガラス工芸である。「あこがれ」は技術や様式の模倣となって現われるが、そのありようは地域によって異なる。オーストリアやネーデルラントでは外見もヴェネチアン・グラスに似た製品がつくられる一方で、ドイツやスペインでは技術を取り入れつつそれぞれの地における美意識に基づく新たな美がつくられていったという。16世紀から19世紀前半までにヨーロッパの他の産地に押されて衰退していたヴェネチアン・グラスが、19世紀後半に自らの古典をリバイバルさせたり、ヨーロッパの他の産地の様式を取り入れていったという点はとくに興味深かった。陶磁器の歴史にも見られるが、技術や様式は一方的に伝播するのではなく、相互に影響を与えあい、発展していくものだということがよくわかる。
 展覧会最後のコーナーでは日本人を含む現代のガラス作家とヴェネチアとの関係を見る。様式の点でヴェネチアン・グラスを引用する作家もいるが、蓄積された技術を自らの作品に援用する者もおり、その関わりかたはさまざまである。ガラス作家というよりもデザイナーとしてイメージをつくり、制作をすぐれた職人の手に委ねる者もいる。他方で、ヴェネチアのガラス会社も外部のデザイナーを起用して新しい作品づくりに挑戦してきた。「あこがれ」の相互関係をここにも見ることができよう。[新川徳彦]

2011/08/19(金)(SYNK)

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