artscapeレビュー
橋本典久の世界 虫めがね∞地球儀
2011年09月01日号
会期:2011/06/10~2011/08/11
GALLERY A4[東京都]
「パノラマボール」で知られる橋本典久の個展。日常風景を撮影した写真を球体に張り合わせた立体作品《Panorama Ball[パノラマボール]》のほか、昆虫を生きたままスキャンして人間以上のサイズまで拡大した写真作品《超高解像度人間大昆虫写真》、6本のLEDアレイを高速で回転することでパノラマボールを動画化した《Panorama Ball Vision[パノラマボールビジョン]》などを発表した。いずれもハイテクノロジーを駆使したメディアアートといえるが、それらが技術に耽溺した凡百のメディアアートと異なっているのは、そこにきわめて原初的な「視たい欲望」が一貫しているからだ。巨大で精緻な昆虫写真にあるのは、小さな昆虫の肢体に目を凝らす子どもの執拗な視線であるし、パノラマボールにあるのは、視線の対象を四角いフレームによって再現することへの徹底的な違和感である。その結果、つくり出された作品が私たちの視線に軽い衝撃を与えることは事実だが、その一方で、それが必ずしも人間の視線に馴染むわけではないところに大きな意味がある。私たちがほんとうに驚くのは、四角いフレームと平面がこれほど人間にとって自然化されているという事実である。
2011/08/11(木)(福住廉)