2020年07月01日号
次回7月15日更新予定

artscapeレビュー

サーペンタイン・ギャラリー・パヴィリオン2011

2011年09月01日号

会期:2011/07/01~2011/010/16

サーペンタイン・ギャラリー[ロンドン]

筆者はいま英国滞在中のため、今月と来月の記事はロンドンからお送りしたい。ロンドンの夏の風物詩、サーペンタイン・ギャラリーのパヴィリオンへ行ってきた。このパヴィリオンは、同ギャラリーの隣接地に毎年夏季限定で設営される仮設の休憩所。2000年のザハ・ハディドに始まり、3期目が伊東豊雄、一昨年はSANAAが担当しており、当代のもっとも旬な建築家が招かれることで知られる。そして今年は、スイス人建築家ピーター・ズントー。写真のとおり、外観は一見、矩形の黒い箱のような建築。入口/出口は表と裏に三つずつある。入るとそこは薄暗いアーケード、建物の外周に沿った矩形状の回廊である。そこから別の入口へとさらに歩みを進めると、突然明るい庭が現われる(歴代のパヴィリオンで初めての試み)。そもそも同ギャラリーは、ハイド・パークに続くケンジントン・ガーデンズという公園/庭園の中にあるから、そこにもうひとつの小さな庭をつくるズントーの発想はたいへん興味深い。庭の形もまた長方形で、植えられているのは野の草花といった趣。それを囲むように、矩形の喫茶用空間が現出する。庭の上部分は吹き抜け、喫茶用のテーブル・ベンチと椅子が並んだ部分には、庇が低く架けられている。まるで日本の寺社ないし家屋の縁側にいるようだ。後で知ったが、パヴィリオンのテーマは、「瞑想の場所」であるそう。この中央に位置する庭のある場所に入ることで、ロンドンの喧騒から離れて心を落ち着ける。そこに座って、また庭の周りを歩いて、静かに各自が思いを馳せるのだ。してみれば暗い回廊部分は、内部の瞑想空間に入るために一呼吸置く場所と解される。ズントー建築のもつ深い精神性に感じ入ったひとときだった。[竹内有子]
図版キャプション:パヴィリオン外観、© Peter Zumthor, Photograph: Hufton+Crow

2011/08/02(火)(SYNK)

2011年09月01日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ