artscapeレビュー

伊万里焼の技と粋──古伊万里で学ぶやきものの“いろは”

2011年09月01日号

会期:2011/07/03~2011/09/25

戸栗美術館[東京都]

1610年頃に誕生した伊万里焼(古伊万里)の、初期から江戸後期までの変遷・発展を解説する入門向けの展覧会。陶器と磁器の違いの解説からはじまり、時代による技法、型、絵付の変化を見る。もとより伊万里焼は個人作家の芸術ではなく、多数の窯、分業体制により生産された実用的な食器、商品であり、その用途や意匠はつねに市場の需要を反映したものである。それゆえここでの展示も表面的な変化を追うばかりではなく、そのような変化を生じさせた社会経済的な背景、市場における変化までをも含めた解説が付されていて、たいへんにわかりやすい。古伊万里の意匠については海外への輸出によってヨーロッパの陶磁器に与えた影響が強調されることが多いが、公式な輸出が行なわれたのは17世紀末の30年に満たない期間であり、国内需要が様式の変遷に与えた影響はずっと大きいはずである。今回の展覧会では江戸時代の日記や小説、絵画を手掛かりに、生活のなかに見られる伊万里焼の姿や町民文化への影響という側面にも焦点を当て、体系的な説明を試みている。[新川徳彦]

2011/08/20(土)(SYNK)

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