2020年07月01日号
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artscapeレビュー

インディゴ物語──藍が奏でる青い世界

2011年09月01日号

会期:2011/07/14~2011/09/27

神戸ファッション美術館[兵庫県]

神戸ファッション美術館は、海外の美術館に行かなければ見られないような古今東西の服飾史を、日本に居ながらにして辿ることができる貴重な施設だ。ファッション教育というポリシーに基づく常設展示は、美術館の本来の姿をそこに見るようでじつに清々しい。今回の特別展示は、「青」の色をテーマに、同館所蔵品および、現代の藍染め、ジーンズ、中国少数民族の青い衣装等を展示し、服飾文化における「青」の広がりを見出そうとする試みである。
 会場に入ると、京都の現役作家、新道弘之氏による「藍の空間」が立ち現われる。白い布に吹矢で30回ほど藍の染料が吹きつけられ、たゆたうように浮かぶ群青の染み。どこまでも深いその青は、見ているとその深奥に吸い込まれていくかのようだ。続くふたつの部屋では、ステュディオ・ダ・ルチザンの創業者である田垣繁晴氏・小夜子氏のジーンズ・コレクション、そして研究者の柴村惠子氏により寄贈された中国少数民族の衣装コレクションが展示される。世界の服飾文化のふたつの極を象徴するようなコレクションを続けて観る経験は、微妙な色合いに対する人間の意識が、文化によりどのように異なるのかを改めて認識する機会となった。最後の大きな部屋では、所蔵品を中心とした東西のさまざまな時代の衣装が華やかに並び、観客を出迎える。
 本展入口前のスペースでは、神戸ファッション美術館と大阪樟蔭女子大学による「学館協働事業展」も開催されていた。これは、同大学が美術館の所蔵品を借用してその制作方法等を研究し、復元品や型紙をつくる事業である。8年目の今回は19世紀のマドレーヌ・ヴィオネのデイ・ドレスの復元等が行なわれた。詳細な研究報告書とともにレプリカや型紙を見る経験はめったになく、じつに興味深かった。デザイン研究においてファッション研究はもっとも難しい分野とされるが、それだけに、充実した常設とライブラリー、資料室を携えた本館の存在は頼もしい。[橋本啓子]


展示風景

2011/08/07(日)(SYNK)

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