2019年06月15日号
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artscapeレビュー

鈴木ユキオ(パフォーマンスキッズ・トーキョー)『JUST KIDS(ジャスト・キッズ)』(発表日)

2011年09月01日号

会期:2011/08/28

吉祥寺シアター[東京都]

本作は、小学三年生から六年生までの児童をダンサーに、鈴木ユキオが振り付け・演出を行なった、NPO法人・芸術家と子どもたち企画・制作による作品。舞台前方におがくずのような塊があり、次第に舞台が進むとそこが砂場に思えてくる。ああ、本作も疑いなく「3.11以後」の作品だ。けれどもあまり嫌な気がしないのは、鈴木のバックボーンをなしているのが舞踏であるからに相違ない。
 冒頭に登場した、ランニング姿など普段着に身を包んだ小学生たち、いかにも鈴木らしい振り付けを次々と男の子も女の子も実行してゆく。「力強く投げ回した腕が胴体に絡まる」といった小さなタスク(と、ここで呼んでみよう)が子どもたちに課せられており、いくつか実行してゆくうちに、生き生きとしてノイジーな子どもの身体は、段々、ダンスという怪物に縛り付けられてゆく。そう、ダンスとは(少なくとも舞踏は)怪しく人を誘惑し非日常へ連れ去るものだ。ステレオタイプの「子どもらしさ」を鈴木はタスクで封じた。その点で痛快だったのは、横に並んで鈴木の背を見ながら、子どもたちが鈴木の動きを真似た場面。従順に模倣するうちに異形の存在になる子どもたち。デリケートでユーモラスでもある振り付けの奥に、ちゃんと舞踏の暗黒性があった(もっと濃密な暗黒性を与えてもいいと思ったけれど)。
 その後、先にあげた砂場に照明がともされる。一人の子どもが砂に手をいれて団子をつくる。それを見ているだけで不吉な気持ちにさせられるのがいまのぼくたちの現実だ。この現実を忘れるためではなく、この現実と拮抗するために鈴木のダンス(タスク)は子どもたちに課せられていた。いわばおばけになるレッスン。家族はどう思うか知らないが、よい教育だったに違いない。

2011/08/28(日)(木村覚)

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