2020年07月01日号
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artscapeレビュー

ヨコハマトリエンナーレ2011

2011年09月01日号

会期:2011/08/06~2011/11/06

横浜美術館、日本郵船海岸通倉庫(BankART Studio NYK)、その他周辺地域[神奈川県]

4回目を迎えたヨコハマトリエンナーレ。最低だった前回とは対照的に、今回はなかなか見応えのある内容になっている。BankART Studio NYKの会場は全体的にまとまりを欠いた展示だったとはいえ、横浜美術館のほうは作品の内容と動線を綿密に計算した展示構成が成功していたように思う。妖怪コレクションを見せる「湯本豪一コレクション」は取って付けたような印象が否めなかったが、それでも石田徹也とポール・デルヴォーを「階段」でつなぐなど、意外な組み合わせは楽しい。とりわけ、強い印象を残したのが蔡佳葳(ツァイ・チャウエイ)、ライアン・ガンダー、そして荒木経惟だ。幼い子どもが大人の手を洗うだけの蔡のシンプルな映像作品と、球体をモチーフにしたリヴァーネ・ノイエンシュワンダーの映像インスタレーションは、それぞれ心に染み入るほど深い感動を呼ぶ。前者は守るべき子どもに守られているからなのか、後者は廃墟を彷徨うシャボン玉の映像が行き場のない魂を連想させるからなのか。きわめつけが最後に展示された荒木で、さまざまな色が混合する美しい夕暮れの写真や愛猫チロが衰えてゆく写真は、人生の黄昏はおろか、人類の終わりをも暗示させる構成になっている。今回のヨコトリのテーマは震災に焦点を絞っているわけではないが、展覧会の来場者の眼には否応なく震災の影が落ちているから、そのように情動的に鑑賞してしまうのかもしれない。けれども、かりにそうだとしても、私たちの心を大きく揺さぶる展覧会であることにちがいはない。毒にも薬にもならないような無難な国際展が数多いなか、今回のヨコトリは川俣正がディレクターを務めた2005年に並ぶ国際展として大いに評価できると思う。

2011/08/10(水)(福住廉)

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