2020年07月01日号
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artscapeレビュー

ミケランジェロ・ピストレット「The Mirror of Judgement」

2011年09月01日号

会期:2011/07/12~2011/09/17

サーペンタイン・ギャラリー[ロンドン]

現代アートを専門とするサーペンタイン・ギャラリーでは、ミケランジェロ・ピストレットの展覧会が開催されていた。ピストレットは、アルテ・ポーヴェラとコンセプチュアル・アート双方の主導的なアーティストと見なされている。彼は1960年代後半から、日常的な「もの」が、思想や表現を通じていかにしてアートに変容するのかについて興味を抱いてきた。今回の個展のテーマは、「鏡」。会場に入って驚くのは、子どもの背の高さほどもある、波打つように巻かれた段ボール紙によって、迷路がつくられていることだ。来場者はそのサイト・スペシフィックな、曲がりくねった通路を回遊してゆく。ふと目をやると、ギャラリーの窓から見える緑豊かな風景とこの空間が連結していることに気付く。そうしているうちに、節々で、大きな鏡を用いたさまざまなインスタレーションに出くわす。「鏡」とそれに自ら向き合うように置かれた仏像のほか、四つの宗教に関連したもの。ギャラリーの天窓から見える空を映す「鏡」の池。「鏡」による大きなオベリスク等々。それらの鏡に映し出されるのはまぎれもなく、立ち止まる観者自身である。標題となっている「判断の鏡」とは、まさに、展示の一部となって他者から見詰められ、自分によってまた見詰め返される来館者自身なのである。いわば、外なる自分と内なる自分に相対して、彼/彼女はしばしたじろくことになるのだ。敷地の隣にある「パヴィリオン」の閉じたようでいて静かに開放されていたズントー建築と、一見開かれているように見えながら鑑賞者の内面を突きつけるような本展との対照が──ともに内省的空間を形成しているとはいえ──印象的であった。[竹内有子]
図版キャプション:展示風景、© 2011 Sebastiano Pellion

2011/08/03(水)(SYNK)

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