artscapeレビュー

Semantic portrait(セマンティック・ポートレイト)

2013年09月15日号

会期:2013/07/29~2013/08/03

Oギャラリー eyes[大阪府]

ポートレイトをテーマにした展覧会。出品作家は松本良太、丸山宏、寺脇さやか。松本はインターネットのSNSなどで仮の“自分”として画面に表示される人型のアイコンをモチーフに、自分自身というイメージにアプローチする作品を発表。デフォルメされた目、鼻、口のない人物の頭部と色鉛筆で濃く塗りつぶされた色面のドローイングは一見無機的なイメージだが、フリーハンドの線の歪さや捩れなど、複雑な奥行きを感じさせる表現がちぐはぐな印象を与えて面白かった。丸山の作品は水彩とアクリル絵の具による肖像画。どの人物も霞がかかったように顔の部分が朧げでそれぞれの表情は不明瞭なのだが、仕草や動作の描写がその場の空気を伝えるように美しく、視線が画面の奥へと誘われる。写真を元に描いているのだそうだが、対象の人物と作家との距離感、時間など、臨場感をもって追体験するような作品だった。寺脇の描く人物のリアルな表情や、画面全体の色彩はやや重たく不気味な印象があるが、よく見ると全体にタッチは軽やかでスピード感にもあふれている。心の内奥を垣間見るように不安や影が過るイメージも魅力的だ。みな80年代生まれの若い作家。作品も各数点ずつだったが、他人との関係性や人間の身体など、作家それぞれの表現のテーマと視点が引き出されたバランスの良い展示で印象に残った。


展覧会「セマンティック ポートレイト」2013 Oギャラリーeyes

2013/08/03(土)(酒井千穂)

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