artscapeレビュー
天若湖アートプロジェクト2013「あかりがつなぐ記憶」
2013年09月15日号
会期:2013/08/03~2013/08/04
京都府南丹市日吉町日吉ダム湖面[京都府]
京都府南丹市にある日吉ダムの建設に際して水没した5集落(宮村、世木林、楽河、沢田、上世木)、122戸の家々の位置を計測し、その一戸ずつのあかりをダム湖面に浮かべたLEDライトによって再現するプロジェクト「天若湖アートプロジェクト『あかりがつなぐ記憶』」。昨年初めて見に行って感動し、今年も無料バスツアーに参加した。今回はあいにく天気が悪く、雨が時折激しく降るなかで鑑賞することになったのが残念だったが、当時の集落の様子や周辺地域の歴史についての説明をスタッフから聞きながら眺める湖面の小さな灯りの数々、霧の暗闇に広がる幻想的なその光景はやはり圧倒的な美しさで、そこにあった人々の暮らしや時間にも思いが巡った。複数の大学の学生たちや周辺地域の人々、ダム管理施設の関係者など、立場の異なる多くの人達の協力によって毎回開催されるこのプロジェクト。今年は9回目にして若い造形作家の作品を紹介するという新たな展示プログラムも始動していた。「スプリングひよし」の展示室にて開催されていた河村啓生展。こちらには河村の合成漆とグルーによる作品が数点展示されていた。明と闇、生と死、破壊と再生などの言葉やそれらの境界について想像が掻き立てられていくのが「あかりがつなぐ記憶」のイメージにも合っている。もっとゆっくりと鑑賞したかったが、ここでは少し急ぎ足になってしまい残念。しかし10回目の開催となる来年も引き続き河村が参加、作品展示を行なうと聞いたので楽しみにしている。
2013/08/04(日)(酒井千穂)