artscapeレビュー
ART ARCH HIROSHIMA 2013
2013年09月15日号
会期:2013/07/20~2013/10/14
広島市現代美術館、ひろしま美術館、広島県立美術館の3館で、現在、「平和」と「希望」というメッセージを共通のテーマにした展覧会が同時開催されている。いずれの館も、広島とゆかりの深いイサム・ノグチの作品をテーマの鍵として紹介しながら、三館三様の作品展示を行なっている。場所(サイト)の記憶に触発された表現に注目した広島市現代美術館の「サイト──場所の記憶、場所の力」、ノグチに影響を与えたであろう彫刻家、画家、デザイナーなど、交友した人々に関わる作品にスポットをあてたひろしま美術館の「イサム・ノグチ──その創造の源流」、“再生”“対話”“平和”をキーコンセプトに時代やジャンルを超えた幅広い表現を3章構成で紹介する広島県立美術館の「ピース・ミーツ・アート!」。一日かけて3館を巡ったのだが、どの館の展示も見応えのある内容とボリュームで考えさせられるものも多く大きな収穫を得た気分になった。作品のなかでは特に広島市現代美術館に展示されていたマイケル・ラコウィッツの作品《見えない敵などいるはずがない(再発見、行方不明、盗難シリーズ)》に揺さぶられた。略奪や放火によって失われてしまったイラク国立美術館の美術工芸品の数々を、食料品のパッケージや包み紙など、人々の生活で消費され捨てられてゆく紙類を用いて張り子のレプリカにしたその作品群には、一つひとつに詳細な解説が添えられていた。作品への理解と関心も深まる丁寧な展示でなにより強く印象に残る。「アートアーチひろしま」各展は10月14日まで開催されている。「ひろしま めいぷる~ぷ」という市内循環バスが運行しており、広島駅前からも乗ることができる。上手に利用すれば、3館を効率的に巡ることができるのでおすすめだ。
2013/08/09(金)(酒井千穂)