artscapeレビュー
A-cup2009
2009年07月15日号
茨城県波崎のグラウンド[新潟県]
今回で第8回を迎える建築関係者によるサッカー大会。日本でワールドカップが行なわれた2002年、阿部仁史、石田壽一、塚本由晴、磯達雄、馬場正尊の各氏を発起人とし、約100人の参加者が集い、初回のA-cupが開かれた。以降、この大会は次第に拡大し、今回は27チーム650人が参加する非常に大きな大会となった。建築とサッカーを愛するという大きなスローガンのもと、銚子にほど近い茨城県波崎に日本全国からチームが集合し、前日に前夜祭、当日は一日で決勝までを行なった。母体は大学の研究室であったり、設計事務所であったり、建築関係企業であったりとさまざまだ。日本サッカー協会のルールに準じるが、建築関係者の親睦を深めることが本来の目的であり、15分ハーフであること、交代は何度でも自由、ピッチ内に40代以上が必ず一人以上、30代か女性が必ず一人以上、女性か中学生以下が必ず一人以上いること、女性の得点は2点とするなど特別ルールが加えられている。女性に触れるとファウルとなるため、このルールを逆手に取って、去年からほぼ女性だけの「スパイクガールズ」というチームも現われるなど、多様性を増したチーム編成が可能となっている。
さて今年の戦い、結果からいうと、優勝は京都造形芸術大学などを母体とした「京都ケマリ倶楽部」、準優勝は大阪の複数の大学による「ソレッテ大阪?」である。関西勢が強かった。筆者のいる56FCは去年ベスト4まで残ったものの、今年は2回戦で敗退。去年の優勝チーム「レアル・間取り・どう?」や準優勝チーム「フノーゲルス」はベスト4にも現われないなど、浮く沈みが激しくドラマも多い。それにしても本気ともお遊びともつかないこのような建築関係イベントが継続していることは、とてもほほえましいことだと思う。誰にも経済的なメリットがあるわけでもなく、単に建築が好きだから、サッカーが好きだからという理由で、これだけの人数が集まり、交流をして全国に散っていく。建築も好きでないとやっていけない大変な仕事であり、その意味で好きであること、楽しむことの大事さを、それとなく感じさせるこの大会は、ある意味、建築家という職業の本質を示唆してもいるのだ。
2009/07/05(日)(松田達)